雨音が聞こえる

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並盛町にある、並盛中学校の体育館。



現在一年A組が体育の授業をしている。





その中に、ある意味で目立っている生徒が一人。




「ツナ、パスいったぞ」



「ぶっ」



『…ははっ』




今バスケットボールを顔面キャッチした「ツナ」と呼ばれる彼だ。



その様子を見ていたあたしは少しだけ笑ってしまう。



彼なりに頑張っているのは動きで伝わる。


なのに、どうしてやる事なす事裏目に出ていくんだろーなー。





そんな事を考えながら、他の女子と同じように見る。


今日は女子の体育の先生がいないから、見たい人は男子の授業を見ていいことになったんだ。







男子の授業っていいなー。



沢山動けて楽しそう。








そう思いながらも目は彼を追っていて。


それに気づいて苦く笑いながら授業を見ていた。

















あたしの名前は山本 弥白。


寿司屋っていう事以外はいたって普通の家で育った。



好きなものは野球!


小学生の時は男子に混ざって沢山やってたけど、さすがに中学入るとやらせてくれない。


女子野球部がなかったから、せめて野球の近くにいたい!って思って男子野球部マネージャーをやってるんだ。


たまに代打としてバッターボックスに立つこともある(練習試合の時とか)。






まぁ、それは置いといて。




あたしが見ていたツナ…もとい、「沢田 綱吉」は勉強・運動ダメダメのダメツナって呼ばれてる。


でも、みんな苦手はある訳で。



ダメツナって呼んでる人たちだって成績はあんまり良くない(人の事言えないけどさ)。





で、その彼だけど、この頃、急成長していきそうな気がするんだ。



今までと何が違う?って聞かれてもよくわかんない。


ただの勘。




そう感じてから、ほんの少しだけ興味が湧いて。(あ、恋愛感情とは違うよ。)



こうしてちょくちょく彼の様子を見てるんだ。





















体育の授業が終わって、さぁ教室に帰るぞって時に、ツナがモップがけを押し付けられてるのを見た。



押し付けてる奴らを注意したかったけど、友達に帰ろう、と背中を押されてしまい。


気になりつつも体育館を後にした。










帰りのホームルームが始まってもツナは戻って来ず。

でもそれが当たり前のようにホームルームは進んでいく。




―もうちょっと人に優しくしよーよ―




考えることに慣れてない頭でもそんな言葉が浮かぶ。






そうして、ツナの姿の無いままホームルームは終わり。





部活が始まっちゃうから、友達の笹川京子と黒川花と一緒にグラウンドまで行く。


この二人は、グラウンドに用事なんて無いのに、あたしが部活の日はこうしてグラウンドまで付き合ってくれる。



『ありがと!』



日頃の感謝を言葉にしてみた。



「え?何が?」


「何よいきなり。
まずは要件を言いなさい。弥白の悪い癖よ。」



けど、京子にも花にも伝わってなかったみたいだ。




『毎日グラウンドまで一緒に行ってくれて!』



「あー、その事ね。気にしなくていいわよ別に。ねぇ、京子。」


「うん!あたし達親友だもん!」




『…ははは』



なんとなく恥ずかしくなって明後日の方を向く。



「あれ、おかしかったかな?」


「もー、これだからこの子は」



そんなやりとりをしてると、ふと視線を感じた。


そっちを見てみると、体育館の窓からこっちを見てるツナとバッチリ目があう。




京子が好きなのかな?


また勘だけど。



ま、京子かわいいからなー。
(↑そう思ってる自分自身もかわいいのだが、無自覚。)



あ、そっか、まだモップがけしてたんだ。

えらいなー。




そんなことを思って、



『が・ん・ば・っ・て』


と口パクで伝えた。


もちろんモップがけのこと、ついでに恋愛面も。





意味が伝わったのか、ツナは一瞬目を丸くすると、すごい勢いでコクコクうなずいた。



前に視線を戻すと、


「おまたせ京子」



剣道部主将の持田センパイが。


『あちゃ〜』ボソッ


「あ、持田センパイ」



よく知らないけど、センパイと京子ができてる噂があるらしい。


そういうのに疎い(らしい)あたしの耳に入るくらいだから、多分ツナも知ってる。



「それじゃ私達いくね。二人のジャマしちゃ悪いし」


「もーー花ったら」



花に腕を引っ張られていく最中に見た体育館の窓には、さっきあったツナの姿はなかった。











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