拍手御礼小説

□『Rhapsody in Brotherhood!』
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─episode 1─





────高2になったばかりの4月、オレは生涯5回目の転校をすることとなった。
日本で3校、アメリカで2校を渡り歩き、10年にも及ぶ海外生活にもついに幕が下ろされ、オレたち家族は久方ぶりに韓国へと舞い戻ることになったんだ。

「今更だよね───オレ、ジュリアード音楽院に進学するつもりだったのにぃ」

所詮はサラリーマンの息子───重々承知してはいるものの、つい抑えきれない文句も口をついて出てしまう渋面のオレに、

「まあ、そう言わないで───韓国に帰れるんだよ?ユチョン、嬉しくないの?」

なーんてひとつ年上のヒョンは相変わらずの天然な笑顔を満面に浮かべてのん気にニコニコしている。

「ん───まあ、ね・・・」

───まあ、どこへ行くにしても・・・ヒョンと一緒ならそれでいいんだけどね───結局は。



オレのヒョンはキレイだ───この16年の人生でオレのヒョンよりキレイなひとをまだ一度も見たことがない───実際のところ。

雪のように色白な肌。
真っ黒でつやつやサラサラな髪。
じぃっと見つめられると吸い込まれてしまうんじゃないかと思わず危機感を覚えてしまうほど大きくてつぶらな瞳。
雪原に一輪咲いたバラのような艶っぽい唇。


あー、おかげさまで見事にブラコンです、ハイ。
おかげさまでヒョン以外のひとを「キレイだ」と感じる感覚が日増しに薄れていく気がするな。

───Well, No problem at all.
何と言われようとも───オレはオレのキレイで可憐なヒョンを愛している。そう簡単には渡さない。

「───まあ、どこでもいいけどね。ジェジュンヒョンと一緒なら、オレは」
「・・・ふふ。ユチョン、可愛いこと言ってくれるな───愛してる」

そう簡単には譲れない・・・この“世界で一番大切で愛しい弟”の座はね。
───たとえどんなヤツが現れても。

「オレも愛してるよ、ジェジュンヒョン」

ヒョンは嬉しそうにオレの頭を両手で抱えるとチュッと髪にキスをした。



   *・*・*・*・*



─────まあ、一緒だから文句はないんだけどさ。

オレたちの転入先は韓国でも名門と名高い全寮制の男子校に決まった。
何しろ“帰国子女”の特権振りかざして決めた名門校だからそりゃ両親は喜んでるけどさ・・・。

全寮制ねぇ───何かメンドくさそー。
男子校ねぇ───良からぬヤツがいそうだな・・・。

あんま気乗りしないけど───まあ、いっか。寮生活なんてはじめてだから新鮮だし、何よりジェジュンヒョンと一緒なら楽しいかもな。

そのジェジュンヒョンは入寮案内を広げながら、
「・・・へえ、学生寮は2人部屋───視野を広げる意味合いでわざと学年の違う組み合わせだって───何か面白そー!ユチョンと一緒がいいな───」

・・・無邪気に喜んでいた。───なのでつい、

(一応これでこのヒトは最上級生だし───相部屋になるのが年下決定なら、まあ心配するほどのことはないかもな───先輩に狼藉を働くような無礼モノは、良家の子息揃いの名門校にゃいないだろ・・・)

などとヒョンと一緒になってお気楽に考えていたのだった・・・・。





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