ワレモコウ
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ピンポーン。チャイムが鳴る。母が出て行く。
『もしかして…』
大きなグランドピアノが部屋に入る。
そして、ビニールが外され、新品のピアノがリビングにドンッと置かれた。
母「これね。お祖父ちゃんからのプレゼント」
『嘘…なんで…だって世界に一台しかないって…』
母「そ。作らせたの」
『お母さん…』
母「また泣く…」
『…ありがとう…』
母「ほら弾いて聞かせて」
久しぶりに弾いたピアノとヴァイオリン。
音を鳴らすだけで笑みが勝手に出る。
未来「良かった…やっと戻った」
母「ごめんね。未来ちゃん…」
未来「彩夜が戻ってくれるならなんでもしますよ」
母「彩夜も未来ちゃんも本当にしっかりしてる。私、誇りに思う…。」
ピアノの横に愛犬4匹。ワクワクしながら彩夜の演奏を聞いていた。
沈んでいた彩夜や愛犬4匹がみるみる内に元気になる。
ただ ヴァイオリンとピアノをもらって弾いて居るだけと言うのに、壊れて使えなくなったピアノとヴァイオリンを目にした時、彩夜は崩れた。
そしてそれを見た愛犬4匹も彩夜と同じく元気を無くした。
だが、今は違う。
手元に帰って来たピアノとヴァイオリン。
それだけで嬉しい気持ちが胸をしめる。
弾いて、楽しい気持ちに満たされる。
母「彩夜、私帰るけど…大丈夫そうね」
未来「今日1日、離れないですけどね」
母「まあ…元気になっただけいいわ」