主は冷たい屍となりて
□THE TRUTH 「Re:密室の恋」
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「警部、わずかですが、反応が出ました――」
「そうか。あっちはどうなっている?」
「他のものがマークしています」
バークレーは司法解剖の結果とレイモンドの報告を持って、彼を伴いスタンレー家に赴いた。
迎えたスタンレー夫人はその身を喪服に包んでいた。
「やっと主人が帰ってきたんです。これからいろいろ準備をせねばなりません。形ばかりだったとはいえ夫婦でしたから――」
あの日、寄り添うようにいたエヴァンズ・アーネストの姿はない。
「手短に済ませます。オルタネット・スタンレー夫人、あなたには兄がおられますね」
応接室に通されたバークレーは、新たに判明したその人間模様を尋ねた。
「ええ、オリヴィエ・コーンウェル。一つ上の兄です。でも、エドと結婚が決まって、前後するように突然消息を絶ちました。今もその行方はわかりません。でも…どこかで生きていると信じていますが――…」
「それが何か?」と首を傾げスタンレー夫人は二人の刑事を見つめている。
「分かりました。で、彼の利き腕はどっちでした?」
「――左です」
突然持ち出された兄の話に戸惑いを見せながらも彼女はそう答えた。
「そして彼もまた……幼なじみのひとり……だった」
レイモンドが呟くように口にした。
「スタンレー氏の左腹部の傷について、お尋ねしたいことがあります。署までご同行願います」
「……どういうことですか?」
顔を歪ませながら問う夫人に、バークレーは静かに告げた。
「あなたとアーネスト氏が宿泊されたホテルの部屋からルミノール反応が検出されました」
それだけですべてを悟ったようだった。
「……私は……ダルタニアンのままでいたほうが良かったのかもしれません――…」
スタンレー夫人は静かに立ち上がった。
END