ハッピーウェディング

□3.揺れて惑い
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       * * *

 穏やかに、慌しく時間は過ぎていく。
 恭耶に辻かずみとのことを確かめることもできないまま、完成させていく級友を尻目にオレはひたすら作品作りに追われていた。
 だんだん殺気付いていくショーの企画スタッフ。恭耶ともここ数日は会うとらへん。
 そして、卒業制作ファッションショーを二日後に控えた日やった。
 知らせは突然もたらされた。
 ドレスもなんとか完成し、教室でオレはドレスに合わせて着けるチョーカーをビーズで作っていた。
 そのとき、恭耶が勢い込んで走ってきた。
「隆広!」
「なん? そない慌てて、恭?」
「今事務所から連絡があったんや」
「事務所?」
「すまん言葉足りんわ。頼んどったモデルの辻かずみが入院してしもた」
「ちょ、ちょお、なん? どういうことや?」
「お前のドレスを着るモデルが急性盲腸で入院したんや。今代役モデルのプロフィールとサイズの連絡来たんやけど、辻より七センチ身長が低いねん!」
 肩で息をしながら、それでも一気に恭耶は言った。
「そ、そんな――…」
 突然目の前が真っ暗やった。ショーは明後日なんやぞ。
「オレまだやらなかんことあるからな。ひとまずこれ渡しとくわ」
「あ、うん」
 恭耶はコピーしたプロフとサイズが書かれた用紙をオレに渡すと、また走っていってしまった。
 辻をモデルにしているのはオレだけやない。そっちにも連絡せなあかんのやと、理解できた。
 だが突然のことで、うろたえとった。こんなとき恭耶にいて欲しいと思ってしまうんは、情けないでまったく。
 だから恭耶にアホやヘタレやと言われるんや。
 でもどないしたらええんや。
 肩を落とすのと同時に溜息が足元に落ちた。
 クラスメートも予期しない事態にオレを同情的な目線を送ってくれていた。


 

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