スプラッシュ・タイム
□【6】
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「その上、個人指導になって、年甲斐もなく練習日が楽しみになりました。でもすぐに困ったことになりました」
「困ったこと、ですか?」
自分の指導に何か落ち度があったのかと、飯島はこれまでを思い返す。
そんな飯島を坂崎が優しい眼差しで口づける。
「指導が終わって、ロッカールームで着替えているとき、あなたの姿が浮かんできてしまうんです。プールでは考えないようにしていた反動のように。おかげで着替えがなかなか済ませられなかった」
「坂崎さん、そんな……」
思い出して笑う坂崎に、飯島は赤くなる。
坂崎の手が飯島の服にかかり、シャツを捲り上げる。裾から大きな手が滑り込んで、直に肌を撫でられた。
「っ――」
「今日はいいですね。その体、存分に見せてください」
シャツの袖から腕を抜かれ、中に着ていた肌着がわりのTシャツも脱がされた。
普段水着で過ごす飯島には肌をさらすことに差して抵抗はないが、この状況では別だった。
コットンパンツの前ボタンはすでに外されていた。
下着越しでも、固く張りつめた変化は隠しようもない。
そして一気にパンツを下着ごと剥ぎ取られる。
「……見ないでくださいっ」
飯島は顔を覆った。服を身に着けていないことが心許なく、恥ずかしくて堪らない。
「顔を見せて。恥ずかしがらないで」
両手首をつかまれ、左右に広げられた。
羞恥に赤く染まった顔を坂崎が覗き込む。
「――なら坂崎さんも脱いでください」
自分ひとり肌をさらしているのは、何だかずるい気がする。
「そうだね」
上体を起こした坂崎が着ているものを脱いでいく。
何度もプールで目にしたはずの体が、ベッドの上だと、気恥ずかしさに見ていられなくなる。
ちらりと、視界の隅に入った坂崎の下腹部では、飯島を欲している証のように牡をあらわにしていた。
服をすべて脱ぎ去った坂崎が覆いかぶさった。
間で互いに屹立したものが擦れ合う。
坂崎の手が頬を撫で、髪を梳いて、胸から脇へと移動し撫でていく。
触れられることの気持ちよさが飯島を夢心地に誘い、そしてさらに下へ行きついた手が飯島のものを扱き上げた。
「ちょ、っと、待ってくだ……あぁっ、ああ――」
今まで自分でしか触れたことのない自身を握られ、その刺激に声が出る。
「……人に触られるの、初めてなのか?」
上がる息を整えられず、こくこくと飯島は頷く。
抱き合う経験はあるが、相手を悦ばせることばかりで、自分を触ってもらったことはなかった。
坂崎が目を細める。
「あの、変…ですか? 触られたことがないって……」
「いや。むしろ嬉しいね。いつもは教えられているが、今日は私が教えてあげるよ」
「な…なに、を……ですか……」
「ベッドの上での泳ぎ方――かな?」
愛しげに坂崎が飯島を見下ろしていた。