浪漫奇譚
□[8]愛してる
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天宮司に抱きすくめられる。
夏輝もその背におずおずながら手を這わせた。
目元にキスが降りてくる。
恥ずかしさと嬉しさと。
高鳴る鼓動に息が苦しくなる。
「あなたをください。もう…生徒じゃないです。教師だからって言い訳はきかない」
夏輝は、黙って頷いた。
夏輝のマンションに二人して戻った。
玄関で、靴を脱ぐのも待っていられないと天宮司が口づける。
「ちょ、ちょっと待てって。お前なに焦ってんだよ」
「もう待てない。外で押し倒さなかっただけましでしょ」
「やだ。ここじゃ。……こないだと同じになってしまう」
天宮司を何とか宥め、玄関にカギをかけた。
年上なのだから、と余裕を見せようとまずは夏輝は居間のエアコンのスイッチを入れる。
「もう、夏輝!」
後ろから抱き締めてくる天宮司の勢いに、倒れ込みそうになる。
「ばか、ホントにお前は。コートぐらい脱がせろよ」
「俺が脱がします」
エアコンのモーターが唸りを上げるのを聞きながら、夏輝は天宮司にされるままだ。
前を広げて、コートが床に落とされる。
天宮司の言葉の一つ一つ、態度の一つ一つが愛しくて、恋しているのだと夏輝は改めて思った。
「天宮司…、それともサフィーラ? ビリディスはサフィと呼んでいたけど…サファイラス?」
「ずっとサフィって呼ばれてきたけど、でもあなたには、翔(しょう)、って呼んで欲しい」
「ショウ?」
天宮司が頷く。
「俺の名前、決めたのビリディス…というか、笹野だけど、文字の意味を知って、けっこう気に入っているから」
天宮司が視線を奥の部屋に滑らせ、夏輝が頷けば、そのまま縺れるように向かう。
ベッドに横たわらせられ、天宮司が夏輝の体に被さる。
身に着けていたものを一つ一つ剥ぎ取り、ベッドの下に放り投げていく。
同様に天宮司も脱いでいく。
肌が晒されるたび、天宮司が口づけ、甘く噛む。
「おい、いいかげんにしろよ。食う気かよ」
おかげで夏輝の肌は余すところなく天宮司に嘗められていた。
「いいかもしれませんね。食べて、あなたが俺の血肉となり一部になる。より一つになれる気がする」
「なれるか」
即座に返した。
「お前に食われてしまったら、もう抱き合えないだろ」
思ったまま口にすれば、天宮司が真っ赤になっていた。