浪漫奇譚

□[7]そして最後のときはくる
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「うわぁーっ!!」
「お前たち、窓から離れるんだ!!」

窓の外に浮くシアネスの姿に生徒が叫び、教室内が騒然となった。

夏輝は生徒を庇い、窓越しに対峙する。

「見つけたぞ。次はお前だ!!」

シアネスの爪が光る。

やられる、と思った瞬間、青い一閃が脇をかすめ、シアネスの爪を砕いた。
腕を押さえシアネスの顔が、不愉快そうに歪む。

覚えのある攻撃に、夏輝は恐る恐る後ろを振り返った。

「サフィーラ……?」

しかしそこには少女ではなく、少年の…、天宮司の姿があった。
ロングボウを持つ左の手の甲には青の輝石。

冷たい表情だった。
青く光るその瞳はシアネスを睨めつけている。

天宮司がボウを構え、左手の輝石から矢を取り出すと、再びシアネスめがけて放った。

シアネスが矢をかわし、宙へ退避する。
天宮司はシアネスを追い、窓から跳躍した。

「天宮司!?」

天宮司がサフィーラ?
まさか、そんな。

夏輝の中で何かが繋がる。

笹野が教室に駆け込んできた。
後ろにはハルカの姿があった。

「無事ですか、ナツキ!!」
「あ、笹…野…先生」
「まずは……」

笹野の手から何か粉のようなものが広がり始める。
仄かに甘い香りがするそれを吸い込んだ生徒たちが次々に倒れ出した。

「いったい何を? 何なんですか、それは!?」
「クボアの花粉です。吸い込むと神経系に作用して眠ってしまいます。これで目覚めたときには何も覚えていない」

笹野の手の甲には緑色の輝石があった。

「まさか…先生が……」
「あなたの鈍さは嬉しくなりますよね」

こんなに身近にいた仲間の存在に夏輝は驚く。

「こっちは撒き終わったわ!!」
「明本…さん? なに……」

明本真綾が飛び込んできた。

「さっきの粉を撒くのを手伝ってもらったんですよ」

少女の姿に、夏輝は驚く一方で元気な様子に安堵した。

「……私がもっと頑張れれば……なのに、私まで石を奪われちゃって」

悔しさから体を震わせて、ハルカが唇を噛む。

「仕方ないじゃない。ハルカもよくやったでしょ? 石を最初に奪われた私が言っても説得力ないけど」

真綾がハルカを慰めるように横に立つ。

「――どうして俺は何も感じなかったんだ」

夏輝は自分の左腕を押さえた。

「サフィがルビアスに感知されないようにしたんです。シアネスの力が増大して、直接我々から奪い取る方向になりましたから」
「そんなの、ありかよっ」
 
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