浪漫奇譚
□[4]まさか本気で恋なんて!?
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部屋に戻り、息つく間もなくルビアスの変身を解いた。
硬く骨ばった本来の姿に戻った夏輝は、そのままずるずると膝を崩して座り込み、熾き火がくすぶるような自分の体を抱きしめる。
「反則じゃん、こんなの――…」
天宮司によって反応してしまった体が恨めしい。
深く口づけされ、胸の丸みを掌で包まれ、あまつさえ下肢に伸びてきた手を受け入れようとしていた。
思い出し、あまりの体験に夏輝は生唾を呑み込む。
ルビアスの体との差異を確かめるように胸に手を這わせた。
当然、膨らみのない胸は滑ってしまう。
そっと薄く色づく部分にも触れてみたが、奇妙なくすぐったさを感じただけだ。
「ほら、これが普通だよな」
どきどきと高まる感覚などない。あの疼くような刺激には似ても似つかない。
しかし何か落ち着かない。
夏輝は自分の手を見た。
ルビアスのときとは違い、大きく男性のものだ。
天宮司の手もこれくらいだったか。
天宮司の手がルビアスの胸を包み、その温もりを感じたとき、全身に走った甘く疼くもの。
「天宮司の手が胸を……」
夏輝は指で胸の小さな薄紅を押し潰す。
じんわりと痺れるような刺激が広がる。
「何やってんだよ、俺は」
それでも手を止める気になれない。もっと強い刺激が欲しいと体の奥から何かが訴えてくる。
先ほどの行為で煽られた体は熱を求めているのか。
「あっ」
爪で引っかいてみれば、つんとした痛みの中に痺れが混じる。
「こんな…の、変だよ……」
天宮司の手を思い出した途端、感じ始めた体。
他の誰でもない、天宮司翔だ。
認めるしかない。
初めてキスされたとき、先送りした問題。
ずっと、苦手だと思っていたのは意識するあまりの気持ちの裏返し。
「あいつは生徒だ。それも男じゃないか。同性だぞ」
七つも年下の少年相手に、狂っているとしか思えない。
これも少女に変身してしまう石の影響なのか。
どんなに言い聞かせようとも、覚え出した熱はなかなか冷めようとしなかった。