浪漫奇譚

□[2]恋は突然、災難のように
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受け持ちでなくとも話しかけてくる生徒は可愛い、と親しみも湧いてくるが、天宮司は少し違った。
口調も態度も丁寧なのだが、どこか傲然さを感じてしまう。
別に敬って欲しいとは思わないが、教師としての矜持を傷つけられる思いだ。

「何だ、お前も遅刻か?」

おかげで些少ながら苦手意識持ってしまっている夏輝は、それを表面に出さないよう気をつける。

「駅前で起きたテロに巻き込まれたんですよ」

天宮司はすっきりとした口元を開き、髪をかき上げた。
その仕草がまた似合っていて、年下とは思えないほどの大人びた表情を見せた。

夏輝の胸につくん、と針で刺したような痛みが走る。

「あ…そ、そうか」

朝の駅前で起きた戦いはテロと片づけられたらしい。

「後ろ乗ってください。急がないと二時間目にも間に合わなくなりますよ」

「しかし――」

いや、バイクで登校は校則違反だと言おうとしたが、積んでいたサブメットを渡される。
そして天宮司がこれ見よがしにアクセルを吹かす。

しかたなく、今日は特別だ、と夏輝はバイクの後ろに跨った。
実際これ以上遅れるわけにはいかない。

天宮司がバイクを発進させる。

「先生…体、大丈夫ですか?」

「え? なんて言った?」

バイクのエンジン音と風を切る音で天宮司の声がよく聞き取れなかった。

「いえ、何でもないです。飛ばしますよ、しっかりつかまっていてください」

つかまっていろと言ったのは何とか聞き取れた。
夏輝は少年の体にしがみつくように腕を回した。



 
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