浪漫奇譚

□[1]オレが美少女戦士?
2ページ/9ページ

言いながら、左手を頭上にかざした。

輝石から光が溢れ、剣の柄をかたどる。
少女は当たり前のように右手でそれを握りこむと一気に引き抜いた。
どこにそんなものが入っていたのか、長剣(ロングソード)が出現する。
華奢な少女の体には大きすぎる得物だが、片手で軽々と振り上げると両手で握り直した。
そのまま青の少女めがけて飛びかかる。

グシャン、と湿った音とともに生物が焼け焦げる嫌な臭いが立ち上る。
人外のものとしかいいようのない生物がルビアスの剣を受けて土塊(つちくれ)と化した。

「サフィーラ、ぼさっとしている時間はないんじゃない?」

にやりと不敵そうに笑むルビアスに「サフィーラ」と呼ばれた青の少女は溜息混じりに首を振る。

「そんなこと言っている間に次が来ます」

周囲のアスファルトが液状化し、中から人型をした生物が何体も出現した。
ぬらぬらと両生類のような湿った表皮、腐った水のような臭い。
これらが、少女たちが戦っている敵、アムリスの雑兵ラタームだ。

サフィーラは左手にロングボウを持ち、構えた。
左手甲の輝石から青白い光の矢が出現する。
体の左側面を標的に向け体勢を整えると弦を引き放つ。

サフィーラの放った矢は、今にも襲いかからんとしていたラタームに向かって真っ直ぐ飛び命中した。
矢に貫かれたラタームはさらに異臭を上げて土塊に返る。

「今日の敵は?」

ルビアスの問いにサフィーラが右前方に目線を投げた。
そこにサーバスと呼んでいる、ラタームよりも大柄で攻撃力が高い生物がいた。

さらにその先には、白のインバネスに同色の武具を着けた青年がいた。

シアネスだ。
その容姿は耳が尖っていなければまったく人と変わりがない。
何度か渡り合い覚えている。
遠目だが見誤ることはない。

「シアネス!! まったく懲りてないな」

次々襲いかかってくるラタームを撃退しながらルビアスは剣を構え直す。
このままシアネス目がけて切りかからん勢いだ。

「ルビアス、シアネスよりサーバスです!!」

サーバスが竦んで身動きが出来なくなってしまっている少女に狙いを定め、徐々に近づいてきていた。
少女は、服装からこの先にあるファセット女学院の生徒のようだ。
周りに他に人はなく運悪く逃げ遅れてしまったらしい。

サフィーラが矢を放ち、サーバスを牽制する。

「シアネスがあそこにいるんだぞ。あいつ倒したら終わるんだろうがっ!?」

手っ取り早く終局させるには、それが最上の方法に思えた。もうこんな戦いは正直止めたい。

朝昼なく、夜すらなく。

嘆きながらも今は変身し、アムリスという敵と戦っている。
それも特殊能力が発動するとはいえ、まったくもって変身前の自分とはかけ離れた姿だ。
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ