災い転じて恋をして

□9.
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 ソファで玉木は、樫原にもたれ何度も降りてくる口づけを受け止める。頬から首筋、鎖骨から肩先へと樫原の指は辿り、そして背中に回った腕に抱き込まれる。絡み合う眼差しと吐息が覚え始めた熱をさらに高めていく。
「玉木、ここで悪いが、いいな。向うの部屋はここよりももっと散らかっているんだ。とても君をつれて行けない」
「いいです、場所、なんて……」
 もう場所などどうでもよかった。樫原がいるところが玉木のすべてだ。
 樫原の腕の中で、玉木は一枚ずつ着ているものを脱がされていった。緩められたネクタイに指がかかり引き抜かれる。首元から上がったワイシャツの襟との摩擦音にさえ、ぞくりと耳朶の奥が痺れた。
 あらわになった肌には唇が押し当てられる。ときどききつく吸い上げられ、ぞくぞくと粟立つほど感じて玉木は堪らず体を捩る。
「じっとしていなさい。動いたら服が脱がせられない」
「で、でも…、くすぐったいんです」
 感じ過ぎて、とは言えず玉木はそんな言葉で答える。
 酔っていた。アルコールはとうに抜け、今は樫原に施される愛撫にだ。
「敏感なのかな、君は」
 薄く色づいた胸の尖りを樫原が嘗める。舌先で転がして、緩く歯を立てられる。
「そんなこと、知りませっ、あくぅんっ……」
 玉木は仰け反った。じんじんと疼くような甘い痛みが広がっていく。
「玉木、もう、こんなになって」
 ベルトが外され、下着の中に樫原の手が入り込んできた。
「い、言わないで、くださいっ」
 口にされなくとも、自分の状態は自覚していた。胸に受ける刺激と相俟って、早くこの熱を外へ吐き出したいと、弾ける瞬間を待っている。
「腰を上げてくれ」
 耳元に囁くように言われ、玉木は従った。両手を脇について腰を浮かせる。樫原が穿いていたスラックスを下着ごと抜き取る。
「なかなか扇情的だな」
 シャツの前ははだけられ肩を剥き出しにして袖のみ腕に残っている。脱がされた下肢は靴下だけだ。
「恥ずかしいです。こんな格好。そんな見ないでください」
 羞恥に全身を染めて、玉木は震える。腕の中にいるときはそれほど恥ずかしいとは思わなかったが、こうして部屋の明かりの下で晒されると居た堪れない。
「いや、ますますそそってくれる」
 ほら、と手を樫原の下腹部に導かれた。布越しでもはっきりと屹立しているのが分かった。 
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