浪漫奇譚

□[6]それぞれの思い
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ハルカと真綾をビリディスが送って行くと言ったので任せた。
ビリディスが変身を解いたのかどうか知らない。

サフィーラはひとり帰っていった。
そういえば、遅れて来た理由を聞いていない。

仲間の背を見送って、ルビアスも帰途につく。
近くの公園に差しかかったところで、木陰に身を隠し変身を解いた。

天宮司がルビアスを待っているかもしれない。
けれど、このままルビアスとして天宮司に会い続け、もしこの戦いに巻き込んでしまいでもしたら。

それは何ものにも耐え難い恐怖だった。

輝石を奪われ本来の姿に戻ってしまったフラビス…真綾のことがショックだった。
シアネスの力の前に、助けることも何も出来なかった自分が悔しい。

「まだまるきり子供だったじゃないか、フラビスは」

いくら石の力で変身し、少女戦士となるからといって、自分に比べたらその生は半分ほどだ。

サフィーラが言ったように、石などないほうがいいのだ。
そうすれば、こんな戦いをしなくても済む。

公園を迂回し、マンションに戻る。
いつもと変らない風景。
夏輝としての生活の場。
それが妙に空々しく思えてしまったのはどうしてだろう。

階段を上がり、西の突き当りが夏輝の部屋だ。
自室のドアの前の人影に驚愕する。

「天宮司……」
「どうして来てくれなかったんですか?」
「あ……」

喘ぐような声しか出なかった。

放課後待っていると言った約束を忘れていたわけではない。
行かなかったのは夏輝の意思だ。

「ここ、寒いんです。中入れてくれますか?」

見れば天宮司はコートも着ておらず、制服のままだ。

言われるままカギを取り出し、部屋のドアを開けた。
半日閉め切っていた部屋は、かすかにまだ日中の温もりを残していた。

室内の明かりをつけ、天宮司を招き入れる。

「きょ…うは……その済まなかった……。急用が…出来て」

言い訳にしか聞こえない。

「分かっています。……でも……」

靴を脱ぎ、上がりかけた夏輝を思いつめた表情の天宮司が抱きしめた。

その腕は強く、振り解けない。
腕の中で夏輝は身を竦ませる。

「天宮司!?」
「待っていたんです、ずっと…あなたを……」

顎を取られ口づけられる。
ルビアスのときと違い、それは激しく荒々しい。
 
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