浪漫奇譚
□[5]戦いの果てにあるもの
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駆けつけたとき、海東ハルカの変身したアルビスが、ひとり闘気をまといラタームの攻撃を迎え撃っていた。
長剣を取り出し、ルビアスも参戦する。
「すまん、出遅れた」
「やっと来たか。遅いぞ、ルビアス!」
アルビスの叱咤が飛ぶ。
が、どうもハルカのイメージがアルビスと重ならならず、ルビアス自身、変身前との差異を言えたものではなが、違和感は拭えない。
「で、揃ったところで『ジュエル・スター参上』と名乗りを上げようと思っていたが、サフィ様がまだのようだ」
「サフィーラ? 珍しいな、あいつが遅れるなんて」
周囲を見渡しても、青のサフィーラの姿はなかった。
こんなことは初めてだ。
いつも一緒に戦っていた同士の姿がないのは心細くさせる。
「――せっかく決めポーズも考えたというのに」
「ア…、アルビス、本気なのかそれ」
きりりと隙なく戟を構えた新しい仲間の発言に、聞き間違いだと思いたい。
「無論だ。なかなか面白かったぞ」
にや、っと不敵な笑みをアルビスは浮かべた。
この辺はハルカの性格の影響だろうか。
さらに「ひとりひとりの口上も考えた」と生真面目な顔で言われると、自分たちは世界の平和を守るジュエル・スターなのだと本気になりかける。
ルビアスは、不謹慎ではあったがサフィーラが遅れていることを感謝せずにはいられない。
ポーズも口上も恥ずかしすぎる。
「アルビス、それよりもラタームだ」
共に戦う仲間は嬉しいながらも、理解を超える言動には戸惑う。
「ああ、そうだな。名乗りも口上も、皆が揃ってからにしよう」
アルビスの返事に、思わずほっとする。
だが皆が揃うとは、もしかしてまだ他にも仲間がいるということか。
確かに、石は全部で九つあるという話だが。
アルビスを見れば、頭上で、気合を入れるように戟を回転させていた。
「ルビアス。向こうにシアネスがいる。多分大丈夫だと思うが、援護に回ってくれ」
「シアネスがっ!?」
アルビスが指し示したほうに、ラタームの群れと白いインバネスが見えた。
間違いなくシアネスだ。
横には一段と大きなラターム…サーバスもいた。
その影に、小さな人影があった。
「あれは――!!」
ツインテールに髪を結った女の子だった。
少しはなれたところには赤いランドセルが転がっている。
下校途中に出くわしたようだ。
考える余裕はなかった。
思うより体が動く。
ルビアスは長剣を振りかざし、突っ込んで行った。