浪漫奇譚
□[4]まさか本気で恋なんて!?
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[4]
輝石と共鳴。
海東ハルカはアルビスへの変化をそう言った。
また石が教えるとも。
アムリスと戦うことにした夏輝に、改めて石の謎に直面する。
落ち着いて考えれば、いろんな疑問が噴出してきそうだ。
ルビアスは足を止めた。
先日の公園に来ていた。
規則正しく設置された街灯が夜の公園を浮き上がらせるように照らしている。
素肌を切りつけるように、冷たい風が吹き抜ける。
ルビアスはその肺に凍えた空気を吸い込むと一気に吐き出す。
会いたい。
時間の約束などしていない。
けれど、必ずいる気がしていた。
ルビアスは木の枝から枝へと移動しながら、天宮司と会った小路脇のベンチに近づく。
人影があった。
やはり、いた。
試験勉強はどうしたんだ、と内心思わなくもなかったが、成績優秀な天宮司には要らぬ心配か。
木の幹を滑るように下りたルビアスに気づいた天宮司が、学校では見たことがない笑みを浮かべた。
「来てくれたんだね」
こくり、と頷く。
天宮司が立ち上がり、手を差し出した。
その手に誘われるように手を置くと、つかまれ、引き寄せられる。
そのまま抱き締められた。
「来て…くれないかと思った」
「どう…して……?」
心臓は許可もなく逸り出す。
ルビアスのとき、身が女であるように心も女になってしまったのか、と思うほどだ。
頬にかかる天宮司の吐息に目眩する。
「ちょっと…いろいろと。でも来てくれて嬉しいよ」
目を細めて心底嬉しそうに天宮司は微笑む。
もっとその笑みを見ていたい。
心の動きに戸惑いながら、天宮司を見上げる。
背中に回った腕は、吹きつける風から守るようにルビアスを包んでいた。
この腕はこれほど優しいのに、学校での天宮司はまったく別の人間のようだ。
それが悲しくなる。
「天…宮司――」
「翔って呼んで……」
口づけがおりてくる。
口を薄く開き、天宮司の舌先を受け入れた。
歯列を割り入ってきた舌が口内で絡み、手がブレスト・アーマーの下から潜りこんで、膨らみを包む。
「あ……」
指が膨らみの先端を擦り上げる。
全身に痺れが走った。
覚えのある熱を下腹部に感じる。
今は存在しないはずのものが、頭をもたげていくような。
「……歯止めが利かなくなりそうだ」
木の幹に体ごと押さえつけられる。
首筋をきつく吸い上げられた。
短いスカートの上から足を撫でられ、くすぐったいと感じているはずなのに、じわりと甘い疼きとなって熱を煽る。
固く閉じていた足から力が抜ける。
もっと熱を感じたいと、体が応えようとしていた事実に愕然とした。
変身すると、意識まで女性化してしまうのだろうか。
相手は自分よりも年下の、それも生徒なのだ。
辛うじて覚えた理性で、首を捻り顔をそむけた。
密着する体の隙間に腕を入れ押し返す。
「どうしたの?」
態度を硬化させたルビアスを訝り、天宮司が抱きしめようと手を伸ばす。
その手を取りたい衝動に駆られる。
しかし、このまま流されてしまってはいけない。
「ご…ごめん――!!」
唇を噛み、頭を小さく振るとルビアスは公園の出口に向かって走り出した。