浪漫奇譚
□[3]輝石の戦士、ジュエルスター
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[3]
「なんでこうなるんだよー。俺のバカー」
部屋に戻り、変身を解いた夏輝は、鏡に映した自分の姿に嘆いていた。
こんなことになるなら、素直に変身を解き、夏輝の姿で公園を行けばよかったのだ。
そこで天宮司と遭遇したとしても、まさかあんなことになりはしまい。
夏輝は自分の口に指を這わせた。
当然、その行為は先ほどの天宮司とのキスを思い出させる。
キスといっても、ちょっと唇が重なっただけだったが、それでもショックには違いない。
相手は生徒なのだ。
いやその前に同性か。
教師と生徒のいけない関係……。
何かの怪しいキャッチコピーが夏輝の脳内で回りだす。
「い、いや、あのときはルビアスだったんだ。天宮司は女の子(ルビアス)にキスしたんだ」
そう思えば多少は気が晴れるかと思ったが、かえって落ち込んでしまった。
ルビアスでも中身は夏輝だ。
ルビアスが感じたことはそのまま夏輝だった。
「だからー」
天宮司はルビアスにキスをした。
そしてキスされたルビアスは――?
動けなかった。
キスは未経験とはいわないが、男相手にキスされて、動けなくなる自分が……。
「本当に俺って――?」
気づきたくなかった。
キスされたことに驚いて、動けなくなったわけではないことに。
「……もう寝よう」
今は先送りすることで、当面の問題から目を逸らすことにした夏輝だった。
ベッドに潜り、頭から布団を被る。
「ああ! やっぱりバカだー!!」
寝ようとベッドに潜りこんだが肝心のことを思い出し起き上がる。
また会えるかと訊いた天宮司に、あのときルビアスは呆けていたとはいえ、頷いてしまったのだった。