フレンズ

□エピローグ
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「なんかさ。いいな、こういうの」

三上は雅人の倍の数のハンバーガーとそれにフライドポテトも軽々たいらげ、店を出る際さらにシェイクを追加注文した。今それを片手に歩いている。
雅人はその食欲に圧倒された。

「いいって?」
「好きなコと一緒に歩くって。まるきりデートじゃん」
「デートって、そうか? 夏休み中だが学校帰りだぞ」
「関係ないっしょ。二人で一緒にいればデート」

臆面もなく言う三上に顔が紅潮してくる。

「ばかやろ」
「あーもしかして室岡照れてる? 可愛い」
「てめーっ! 可愛いとか言うなっ!!」

三上の手からシェイクをひったくると、ずずっとストローを吸い上げた。
口に冷たいバニラが甘ったるく広がる。

「やった、間接キス」
「あ…」

嬉しそうに目を細める三上に思わず自分が墓穴を掘ったことに気づく。

「でもさ、そんな顔副会長には見せるなよ。いや、誰にも見せて欲しくねえな。もったいない」
「か、可愛いとかもったいないとか、変じゃないかそれ。俺今までそんなこと言われたとことないぞ」
「だよな。あんたってどっちかといえば無愛想だし。だからその顔はオレだけのね。他の奴に見せるなよ」

にぱっと笑い恥ずかしげもなく言う三上に、雅人はどう返事すればいいのか分からずシェイクをさらに吸い上げる。

「あー、オレの分残しておいてくれよ」
「もうない。全部飲んだ」

言われたお返しだと半分も入っていなかったシェイクを空にする。

「ちぇー、返せよ」
「み、三上ー!? んっ」

往来で。

夏の午後という時間帯のせいか人通りはなかったが、いくらなんでもこんなところで。

唇が一瞬の冷たさを味わうように触れて離れていく。

「ばか! ここをどこだって思ってるんだ!!」
「道。ついでにオレんちの近所」
「おまえ何考えてんだよ。だったら余計に不味いじゃないか」
「いいじゃん、したくなっちまったんだし。これでも堪えてるの大変なんだぞ」
「何をだよ」
「いろいろとさ」

心持ち唇を尖らて言う三上に、その辺は同じなんだと雅人も理解する。
だからこうして不意に仕掛けられると困ってしまうのだ。

 
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