フレンズ
□エピローグ
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グラウンドでは三上が顧問に叱られているところだった。
頭を下げて謝っている。練習途中でいきなり抜けて来たようだから、それも当然だろう。
振り仰げば、生徒会室の窓がここからはよく見えた。
「三上くんに何か用なんですか?」
かけられた声に目線を移すと、ジャージ姿の女生徒がいた。
同じ二年で典之と同じクラス。
陸上部のマネージャーだ。キャンプのときは長い髪をそのまま背中に流していたが、今はきっちり一つに結わえている。
「そうだね。用がある…かな」
「同じクラスだからって練習の邪魔しないでください」
大人しそうに見えた少女の「こっちには来るな」と牽制を込めた目に雅人は思わず苦笑してしまう。
三上がいきなり練習を抜けた原因を知っているようだ。
しかしその事情までは思いつかないようだが。
「別に邪魔する気はないよ。練習はもう終わるんだろ?」
「そうですけど……」
「邪魔にならないところで見てるから」
言い残し、雅人はグラウンドの端に植えられた木立へと移動する。
三上がグラウンドの外周を走り始め、雅人に気づき手を振った。
「お待たせ!」
着替えもそこそこにスポーツバックを背負い三上がかけてくる。
はだけた制服のシャツの胸元から覗く素肌に汗が滲んでいた。
二人並んで駐輪場まで行く。
「んじゃ行こう。乗れよ後ろ」
止めてあった自転車を引っ張り出すと前に荷物を入れる。
「自転車…荷台つけたのか?」
「そう。でないとあんた乗せられないじゃん。ホームセンターで買ってこないだつけたんだ」
当たり前のように言う三上の笑顔がまぶしい。
「な、何か食ってかねえ? オレ腹減った」
「分かった。じゃ、表通りのハンバーガー屋あたりどうだ?」
「OK。じゃ、乗ったか? 行くぞ」
二人を乗せた自転車は夏の日の中滑るように走り出した。