フレンズ

□エピローグ
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「あのさ、室岡。あんた分かってる? 副会長のこと」
「分かってるつもりだけど。だがあいつのことを理解するのは難しいな」

腕をつかまれたまま階段を駆け降りる。
早く生徒会室から、というより典之から離れたい一心のようにも思えた。

「ああ、まったくもう! ちっとも分かってないじゃん。前あんたは、そりゃ…あいつと…その、つ、つき合っていたわけだけど。だけど、今は! 今はオレとなんだよ。それに! オレのほうがあんたに会ったのは早いんだからな」

汗を滴らせながら一気にまくし立てる。

いつもは泰然そうに構えている三上のこんな態度に新鮮さを覚えてしまう。
それは自分だけが知っている三上なのだ。

「あ…えっと……悪い……」
「違うって! 俺は謝って欲しいんじゃなくて――」
「橋倉のことは気にするなよ。あいつは俺で遊ぶことを覚えたみたいなんだ」
「だから、それが気に食わねえんだって」
「気に食わないって三上。そうは言うがあれで根はいい奴…とは言い難いな。だけど悪い奴じゃない」
「ったく室岡。オレは嫉妬してるんだよ。今だってオレが来なかったらあの部屋でどうなっていたか」
「キスしようとしてたこと? ふざけていただけさ。本当にしてしまうわけじゃ……」
「なんでそういうことさらって言えるかな。冗談でも。あんたにそういうことしていいのはオレだけだからな」

同時に掠めるようなキスが唇を通り過ぎた。

「バ、バカやろ…、こんなとこで…っ!!」

雅人は自分の唇を押さえ恥ずかしさに目元を染める。

以前だったら、今言われたこともされたことも。
それを許容してしまう自分など考えもしなかった。

「いいか? 副会長には近づかないでくれ。またさっきみたいなことになったら、オレ今度は副会長殴るからな」
「陸上部のホープが何言っている。――だけどその前に俺が橋倉を張り倒すだろうな」

とたんに三上は目じりを下げ、満面の笑みとなった。

「室岡〜」
「くっつくなよ。学校だぞ」
「休み中だもん。誰もいないって」

自分より頭半分背の高い三上に抱きこまれると身動きが出来ない。
熱く火照ってきた身体は汗ばんでいる三上の体温が移ったせいなのか。それとも――。

掠めた唇にドキドキと高鳴る鼓動。
自分のことなのに判断がつきかねた。

「一緒に帰ろう。待っててくれよな」

もう練習も終わるからと三上はグラウンドに戻って行った。

走っていく背中を見送ると、雅人も靴を履き替えるため昇降口に向かった。

 
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