フレンズ
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さすがに気だるく、ベンチに横たわっていた。
三上と繋がった箇所は、痺れにも似た痛みを訴えていた。
「室岡……動けそうか?」
「いや……まだムリ……」
先まで散々名前を呼んでいたのに、と雅人は横に座る三上見上げた。
どれくらい時間が過ぎたのか、だがそんなことなどどうでもいいような、今世界には二人しかいないとさえ思った。
「このままここで夜を明かしてえな」
「ばーか、明け方凍えるぞ」
同じようなことを考えていたなどと、言えるはずもなく照れ隠しにぞんざいに返す。
「情緒っていうもんないのかよ。オレまだドキドキいってるのに」
「俺だってそうだよ。まだおまえが中にいるみたいだ」
「ぐっ」
三上が顔を赤らめる。
それは星明りの中ですら鮮やかだった。
「そろそろ戻るか。さすがに二晩続けて行方不明は不味いな」
雅人は上体を起こし、立ち上がる。
だがふらつき、三上に抱き止められた。
「しっかりしろよ」
「誰のせいだよ」
三上に支えられながら来た道を戻り始める。
さすがに今夜のイベントはもう終わっていて、展望台付近には誰もいなかった。
宿泊施設の明かりが見えてきたところで雅人は立ち止まった。
「ん? なに?」
「あのさ、戻る前にもう一度……」
このまま戻ってしまうのが惜しかった。
もう少しこの時間を共有していたい。
「キスしようか」
すべてを言葉にしなくても伝わる。
交わす唇に今の気持ちを込めた。
「三上…好きだ――…」
「ああ」
嬉しそうに三上が笑った。
雅人もそんな三上の顔を見るのが嬉しくて、自然に笑みがこぼれる。
指を一本ずつ絡めるように手を繋げると、あえて言葉を交わさなくてもそこから互いの気持ちが沁み込んでくるようだ。
触れ合うだけでこんなにも。
思いは満たされていく。
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