フレンズ

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雅人の不安を見透かすように言葉が連ねられる。

「本当に俺を好きだというのか。分かってるのかそれって」

それでも……。

「好きだよ。ずっと好きだった」

てらいもなく返される三上の言葉はストレートに響く。
何かあるたび噂された過去から臆病になっている雅人にはいっそすがすがしくて。

重ねられた手に力が入る。

「おまえ、こんなとこで」

身を乗り出してきた三上から手を取り戻そうと、身体を引くがびくともしない。

「邪魔して悪いけど、こんなところでさからないでくれる?」
「川、野!」

手を腰に当て先ほどの三上より機嫌悪そうに副委員長が見下ろしていた。

「私って何か昨日からこんなシーンばっか出くわすんだもん。何かヤダ」
「あの、これは……」
「三上、あいつらにあたるのはやめてよね」

川野は言いかけた雅人など気にする様子もなく、遠くでこちらを窺っている先ほどの三人を後ろ手に指す。

「オレは別に……。ただ、室岡の返事が聞かせてもらえないだけで」
「三上!」

川野にさらりと言ってのける三上に、いくら何でもと慌てる。
だが川野も心得たもので、一向に動じる気配はない。

「あいつらうっとうしいから三上何とかしてよね。私は今から室岡に用があるんだから」
「だからオレ返事が――」
「だったら室岡。ちゃんと返事しなさいよ。あんたがこの純情バカを選んでも、私の気持ちは変わらない」
「バカって…。でも川野どういう意味だよ、それ」
「川野さん…本当に……」

雅人の懸念などお見通しだとばかり、川野は強気な笑みを浮かべる。

「変わらない」と言った川野の言葉が嬉しかった。
ずっと好きだったと三上は言った。

そんなに悪いことばかりじゃない。

(麻里、俺見つけられるかもしれない――)

「三上、手を貸せ」

あさみの名も過去への悔恨も振り払い、自分の足で真っ直ぐ立ち上がる。

「――俺、川野さんのこと好きだよ」

三上が驚愕に目を見開く。
川野も一瞬理解できないという表情になったがすぐに破顔した。

「ありがとう。面と向かって言われると何か照れるけど。私も室岡のことそう思っている」
「おい、室岡!」

慌てて焦った声を三上が上げる。
今にも雅人に食ってかかりそうな勢いだ。

 
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