フレンズ

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「な、委員長。三上ずっとこの調子でさ、機嫌悪いったらねえべ」

伊沢がその場を取り繕おうと軽口を叩くように言うが、座り込んでしまっている雅人を見て三上は不機嫌さをさらにあらわにする。

「じゃ…じゃあ。オレら行くわ。三上、ちゃんと室岡には謝ったからな」

そそくさと伊沢を引きずるようにして走り去っていく姿に、逃げ出せるものなら自分もついていきたいと思った。

「室岡……」

傍らに来た三上が膝を折る。

「足が痛むのか?」

雅人は首を振る。

足など痛くない。
痛いのは……。

「あさみ……か……好きな人……」
「あ…うん。――聞いたのか、昨日のこと」
「うん」
「オレは……。バカだろ、ホントに」
「バカだよ、おまえは。そして俺はもっとバカだ」

三上の手が雅人のそれに重ねられた。

フラッシュバックした記憶がより鮮明な輪郭を取りはじめる。
過去へと繋がって行く。




「オレ、中三のときに転校して来たって言ったろ。親父の転勤につき合って来たんだ。受験だったし、残る話もあったけど、転勤先の住所聞いてついていくことにしたんだ」
「……あさみ…がいる町だったから?」
「ああ。偶然とはいえ、親父の会社に感謝した。ホントに探すの苦労したんだ。ガキで、どうしたらいいのか分かんなくて、でも会いたくて。ずっとあさみのことが好きだったんだ」
「あさみ…は……」
「分かってる。室岡、オレが会ったのはあんたなんだ。同じ高校に入れて今年同じクラスになれて。オレは神様に感謝した」

三上の口から出た「神様」が似合わない。
笑おうとしたが、切なさが込み上げる。
記憶は幼かったあの夏の日へといざなう。

「昨日あんたに言ったこと、本当だからな。オレはやっと自分の『好き』がどういう意味なのか分かった」

それは何ものにも変えられない真実だと三上の眼差しが告げていた。

だが同性なのだと、今さらのように不安が過ぎる。
言葉にしてしまえば、ちょっと仲のいい友だちなのだと、もう取り繕うことは出来ない。

「室岡。あんたが好きなんだ」

 
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