フレンズ
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雅人の前で級友たちは互いを牽制しながらなかなか口を開こうとしない。
「ったく! じれったいな、おまえら」
伊沢が業を煮やしたように二人に向かって言う。
「……分かってるって。だから、室岡」
ひとりが挑むように一歩出る。
雅人は思わず身構える。
「昨日! 悪かったよ。妙なこと言って」
そう言って頭が下げられた。
「え……」
続いてもうひとりも「すまん」と言った。
「朝こいつらが、ワケは言わねえんだけど、委員長に謝りてえって来たんだ。しょうもねえこと言ってしまったからって」
雅人は思わぬ展開に驚く。
「三上の機嫌がめちゃ悪いんだ。今朝だってオレらのこと睨むし」
「だけど三上がどうのってだけじゃないぜ。委員長のこと興味だけで話して…悪かったなって……」
いささか強張った面持ちの二人は、昨夜三上が言ったとおり悪気はなかったのだろう。
過剰に反応してしまった自分が可笑しくなり、張っていた気が緩む。
「分かった。もういいよ」
少し笑んで告げれば、彼らは詰めていた息を吐き出し、表情を和らげる。
「室岡、本当に…あの……」
「うん、俺も悪かったよ。つい過敏になっちゃって」
念を押すように言う級友に雅人は力むことなく自然に笑みが浮べられた。
「昨日はたまんねぇぜ。三上はずっと機嫌悪いし、委員長は点呼の時間になっても戻って来ねえし」
伊沢が謝罪は済んだと大仰に嘆きながら話し出す。
昨夜委員長としての仕事を放棄してしまった雅人には耳の痛い話だった。
「あれは…悪かったよ。……三上が代わりに川野さんと点呼回ったって聞いたけど」
雅人が言えば、決まり悪く級友たちが互いに顔を見合わせる。
「三上、川野さんと何かあったのか?」
そういえば、と昨夜何か含みのある言い方を川野がしていたことを思い出す。
気のせいかと思っていたが、そうではなかったらしい。
「いや…川野と何かあったと言うか、C組の女子とあったと言うか」
「どういう…?」
自分の知らないところで起きたことに首を傾げるしかない。
「昨日、花火のあとC組の子が三上にコクったんだ。誰だっけ?」
「マネージャーだろ? 陸上部の。昼間も何でか三上にくっついていたし」