フレンズ

□---3
4ページ/5ページ

『室岡ってさ、わりと顔に出さないじゃん。何かあっても。何ていうのかな、ポーカーフェイス? でもさ、ときどきヤバイなって思うときがあんだよ』


おまえ、ときどき泣きそうな顔をする――。


そう言ったのは典之だ。あれは他の人間より、自分にとって近い存在だから。
気づかずに張り詰めていた気持ちが緩んでしまって……。


三上って意外とクラスのこと見てるじゃない。


川野は三上のことをそう言った。同じクラスになって三ヶ月の級友はそれほど皆ことを見ているというのか。

「おまえの観察力には感服するよ」

皮肉めいた言葉が出た。

「別に俺は傷ついてなんかいないよ。面倒な選手決めが早々に終わってスッキリしたんだから」

何もこんな言いかたするつもりもなかった。
これでは、とても気にしている、と言っているようではないか。

『――そうかな。オレの勘違いならいいんだ。ゴメンな、忙しいときに電話して』

三上は言葉通りに受け取ったのか。

今どんな顔で電話をしてきているのだろう。人懐こい顔で笑う三上が浮かんだ。
その顔が曇っているのだろうか?

自分のせいで――?

『室岡?』

応えのない雅人に、三上が名を呼ぶ。

『あの…じゃ、用はそれだけだから――』
「あ、待って」

電話を切ると告げた三上に、とっさに言ってしまった。

少し、感傷的になっているだけだ。
今日一日でいろんなことを思い出してしまったから。

『なに?』
「あの……」

呼び止めてしまったが、「じゃあ」と言って電話を切るだけではないか。
何を躊躇っているのか。

「えっと……ゴメン、何でもないんだ。じゃ――」
『もう少し、何か話そうか?』

三上は何を言った?
言葉を反芻すると胸が締めつけられるように痛くなった。

『と言ってもー何話そう。んっとー、こんなこと言ったら室岡怒るかな?』
「何?」

何を言われるのかと身構えた。
しかし。

『笑ってくれない…かな』
「み、三上!?」
『あんた、笑うときっとすげーいい顔だと思うんだよね』

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ