フレンズ

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「ごちそうさま……」
「あら雅人、もういいの?」
「うん。もらったパン、友達の家でも食べてきたから」
「そう」

食の細い息子だと思っているだろうか。
母の手料理は美味しいと思う。
けれど。

不意に居間の電話が鳴った。

「あ、俺出るから」

何か言いたげな母の視線を振り払うように席を立ち、電話に手を伸ばす。

『もしもし、室岡さんの――』
「み、三上!?」

聞こえた声だけで誰だか分かった。
雅人は三上がかけてきたことに驚く。

「ちょっと待ってくれ」

慌てて保留ボタンを押すと並べて置いてあった子機を取った。

「どなたから?」
「クラスメート。――部屋で話すから」

クラス委員の雅人に電話があるのは珍しいことではないが、何かうろたえたようにも見える姿はめったにない。
父も母も今までにない態度の雅人を見ていた。

妙に居心地の悪い視線を背中に感じながら、自分の部屋に向かう。

「きっとカノジョだよ」

弟の声が聞こえ、続けて笑い声が上がった。




「悪い、待たせた」

ベッドに腰かけながら、耳に受話器を押し当てる。

『いや…いいんだけど、電話しても良かったか?』
「え? ああ大丈夫だけど。……何?」
『えっと……』

珍しく三上が言いよどんでいる。

「用があったからかけてきたんだろ? 球技大会のことか?」
『うん、今日の選手決めのとき。そんな気はなかったんだけど、何かオレ、ヘマしちゃったみたいで……』
「今日? 別に何もなかっただろ?」

勝手に種目を決めてしまったことを謝るというのか?
あんなことたいしたことじゃない。

『うん…そ…うかな。でも、あんとき。あんた何かすっげー傷ついた顔してたから』
「え――…」

雅人は言葉をなくした。
考えもしなかった三上の言葉だった。

 
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