フレンズ

□エピローグ
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◆ エピローグ ◆



夏休みも八月に入った。

クラス委員のほかに学年総代という役職も成り行きとはいえ拝命している雅人は、休み中だというのに真面目に登校する。

休み早々にあったクラスキャンプで、晴れて三上と思いが通じ合った。

毎日のように会って、夏の日差し以上に熱くときを過ごしたいとごく当たり前に思う気持ちもなくもない。

だが、置かれた立場の責務は果たすという元来の性格ゆえか、こうして夏休みでありながら、生徒会役員と並び、九月下旬に予定されている文化祭、運動会の準備のため出てきていた。

「では、今日はこのへんで。また来週お願いします」

会を取り仕切っていた生徒会長が閉会の旨を告げると、一斉にみな立ち上がる。

簡単に片づけをし、役員が部屋から出て行く。
窓近くに座っていた雅人も退室しようと歩き出したが、会長から生徒会室の鍵を預かった典之に行く手をふさがれる。

「今日の予定は?」
「別にこれといっては……」
「そう? 待ち合わせてるんじゃないの?」

典之が開け放してある窓からグラウンドを見下ろす。
何を見ているのか、聞かなくとも雅人には分かった。
夏季練習として登校している陸上部がグラウンドを使っているのだ。
その中に目当ての背の高い雅人の級友がいる。

「おーおー。あの大型犬頑張ってるじゃん。秋季大会に向けて練習?」

無視して行こうとする雅人の腕を典之がつかみ、引っ張られて窓際まで移動する。
既に部屋には二人のほかにいない。

「離せよ」
「ま、いいじゃん。見ろよ。あ、あれはマネージャーか? 三上にタオル渡してるぞ」
「うるさいな。関係ないだろ」
「かわいそうにな、彼女も。三上に好きな人がいるって聞かされても諦めきれないんだろうな。俺と同じで」
「橋倉! おまえ、性格悪いぞ」

雅人はつい声を荒げる。

三上とのことを知りながら、自分を構う典之が何を考えているかなど、理解の範疇を超えている。
それでも雅人にとって、彼が飾らない自分のままでいられる数少ない人間であることには変りはなかった。

最近は、本当に典之は自分を好きだったのかと聞きたくなるほど、自分たちをネタに楽しんでいる節を感じなくもない。

「な、室岡。三上とはもうやった? どっちがやるほう?」

 
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