フレンズ

□---11
1ページ/6ページ

◆ 11 ◆



施設的に充実しているとは言い難いこのキャンプ場での二日目はウォーキング。
管理棟で昼食用の弁当を用意してもらい、山頂を目指す。

先頭は、ほとんど生徒の自主性に任せられていたが一応の責任者として同行している担任教師と副委員長だった。

気まずさを覚える級友たちの中にいるのは居たたまれず、足取りは自然ゆっくりになった。
それがいつの間にか一番後ろになる。
その雅人につき合うように三上が隣で歩く。

三上の唇に自然目が行ってしまう。
あの唇が自分に触れたのだ。朝の明るい日差しの中で思い出してしまったそれは鮮やかで、必要以上に雅人の鼓動は逸る。

「足…大丈夫か? 少し休むもうか」

三上の目線の先に、休憩所があった。
といっても茂みの中にコンクリートで出来たベンチが置いてあるだけだ。

「大丈夫だよ、捻ったわけじゃないし」
「辛くなったら言えよ。我慢するこたねえから」

普段でも見せる三上のこんな気遣いでさえ、意識している雅人には頬を紅潮させるには充分だった。
最後尾を歩いていて良かったと真剣に思うほどに。




予定通りに山頂に着けば、あと僅かで日差しは真上に差しかかる。
フリータイムとなり、クラスメートが銘々に行動始める中、三上は写真が撮りたいと言ってきた女子に引っ張られて行ってしまった。

休憩小屋の影でその壁にもたれるように立つ。
正直やっと息がつけた雅人だった。

三上の気持ちを嬉しいと思いながらも、ぐずぐずと心は沈んでいく。

女子に囲まれて人好きのする笑みを浮かべている三上が分からない。
好きだと言われても、そのまま受け止めることが出来ない。

人から向けられる好意に慣れない。
思いを返したとたん、手痛い目に遭いそうで怖い。

「室岡」

躊躇いを含んだ声に顔を向ければ、同じバンガローに宿を取る昨夜自分の話をしていたクラスメート。
それと伊沢だった。

まだ何か言うつもりなのか。
明るい昼の日の中、持ち出す話題としては不健康すぎだが、今までこうして面と向かって切り出そうとしてきたやつはいなかった。

「なに?」

例え何を言われても、自分がしてきたことなのだ。
努めて平静に雅人は返した。
それでも肩に力が入っていると自分でも思った。

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ