フレンズ

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◆ 10 ◆



久々に思い出した昔のこと。
それはあのころの傷のままにそこにあった。
それでも過ぎた月日の分、痛みは風化していた。

どうしたところでこれが自分、と強がってみても、実際はひどく脆弱な人間だと言うことも気づいていないわけではない。

振り仰げば星に本当に手が届きそうな空だった。

「室岡……」

典之と別れて、バンガローまでひとり戻ってきた雅人は不意に現れた川野の姿に正直驚く。

もう既に十一時を過ぎていた。

「川野さん。こんな時間どうしたの?」

だがどうしたもないだろう。
自分を待っていたのだ。
立場を思い出し、恐る恐る尋ねる。

「あの、点呼とか、えっと……」
「みんなやった。当然じゃない。こんな優秀な副委員、他にいないよ? 先生にも室岡が抜けてることは黙っておいた」

雅人の不在を責める様子もなく、その声は明るい。

「――ごめん、悪かったよ。ひとりじゃ大変だったろ?」

何も言わなくても「川野なら――」と思い、勝手ではあったが任せたことに間違いはなかったが、済まなかったという気持ちはもちろんあった。

「だったら時間には戻っておいでよ。ま、三上に手伝わせたから大丈夫よ」
「そう。三上にも謝っておかなくちゃな」
「別にいいんじゃない? それくらい、あいつには――」

素っ気なく返された言葉に、何か苛立ちのようなものが見えた気がした。
だが川野の表情に変化はない。
あたりの暗さゆえ分かり難いだけかもしれないが。

「じゃあね、お休み。と言ってもまだみんな起きてるけどね。――明日も頑張ろうね」
「ああ、お休み……」

背を向け走っていく少女に捕まえきれない思いが過ぎる。
自分が出した解を知ったとき、彼女はどう受け止めてくれるのだろうか――。



 
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