フレンズ

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夏休みに入った。

いろいろあった休み前。
不思議と三上との関係は、あの状態で続いていた。

ときおり何か言いたげに見えたが、雅人は何も答えない。
否、答えようがない。自分の気持ちが表面化しないように気をつけながら、素っ気ない態度を取る。

だが雅人がどんな接し方をしようとも、三上は相変わらず構い続ける。
いつしか一緒にいることが当たり前のように対人関係も変わっていった。

胸に秘めた報われることのない恋情は麻里に向けたものとは違うものに育っていた。

一人きりで居場所を探し始めて二年目の夏。





「えーっと。今日から三日、ここで過ごします。各自振り分けにそってバンガローに移動するように。夕食は六時から。当番の班はその準備をお願いします。他の人はそれまで自由時間。以上――」

管理棟での受付を済まし、雅人の声がクラスメイトの間で響く。

集合場所の学校から、バスに揺られて二時間。
途中、景観のいいところで持参した弁当を食べた。

そして、今キャンプ地にいる。

雅人たちが宿泊するバンガローは、六畳ほどの平屋でそれが六棟ほど立ち並んでいる。
その一画すべてをクラスで借り切った。

昨今のオートキャンプ・ブームに取り残されたようなこのキャンプ地は、近くにコンビニなどの店舗もなく、学校関係の宿泊先に用いられることが多かった。

不便ではあったが最低必要なものは管理棟で揃えられるし、却って日常から切り離された不便さがキャンプに相応しいと、学校サイドの受けがいい。
またかかる費用も安いのも一因だろう。

歩き出したクラスメイトの後を雅人も続こうとしたとき、三上が横に来た。

「よ、室岡。三日間楽しもうな」
「ああ」

横目で見上げ短く返事をすると、そのまま歩き続ける。

「室岡冷たい。もっと言葉あるだろ?」
「なにが?」
「まだ恨んでる? キャンプ決めたこと。約束どおりちゃんと手伝うって」
「――当たり前だ」

本音は球技大会だけで終わりにして欲しかったが、クラスの総意として決まった以上、委員長としての役目を果たすだけだ。
雅人は口元を引き締める。

視線を感じて周りを見れば、クラスの何人かがくすくすと笑いながらこっちを見ていた。
こんな光景が増えたように感じる。

 
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