フレンズ
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無視をしたほうが、良かったのかもしれない。だが、「送る」と言ったのは三上のほうだと、都合のいい折り合いをつける。
正門横の自転車置き場では、三上が自転車を前にして、所在なげに校舎の壁にもたれ立っていた。
「み、かみ――」
声を発したつもりだったが、渇いた喉からは息が吐き出されただけだった。
しかし、三上はその気配を察したらしく、自転車を押して雅人のほうに来た。
「ちゃんと食べたか?」
それが先ほどのお握りのことだと気づく。
「あ…いや…。おまえ待たせるのもな…って思ってまだ……」
「そうか」
三上の返事はそれだけだった。
二人して校門を出る。
三上は何も言わない。
しばらくそのまま黙って歩いた。
それが新たに、気詰まりに拍車をかける。
「乗れよ」
「え、乗る?」
唐突に三上が口を開いた。
何を言われたのか、理解出来ずに問い返す。
「自転車の後ろ。やっぱり足痛めてるみたいだな」
「え――…」
湿布薬が効いているとはいえ、右足は僅かながらも痛みを訴えていた。
だがこれくらい平気だと、普通に歩いて来たつもりだった。
躊躇(ためら)っていると、三上が早く乗れと急かす。
言われて改めて三上が押している自転車を見れば、前見たときとは色こそ似ていたが、違う自転車だと気づいた。
このために誰かに借りたということか。
はじめから後ろに乗せるつもりだったのだ。
「おまえ…そういえば荷物は?」
「ん? ないよ。あんた送ってったら、また学校に戻るつもりだし……部活あるからな」
何気なく目に入った持ち主の名前に、ほんの少し言いようのない感情を覚える。
「自転車借りたの、同じ部の……」
「ああ。マネージャー」
しかしあっさりと返されると、雅人のほうがその感情の始末に困ってしまった。
仕方がないと、溜め息を一つ落とすことで無理やりしまいこみ、希望どおりに自転車の荷台に乗る。
そして三上も、サドルに跨る。