フレンズ

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試験前、試験中……。
雅人は、普段よりも勉強に集中力を強いられた。

気を抜けば、脳細胞は勝手に思考始める。
それの軌道修正はとても骨が折れた。

(疲れた……)

こんなことではいけない。
それは充分分かっている。
それでも一度意識した思いは止(とど)まることなく膨らんでいく。

家族とは違う。
友人とは違う。

麻里とは違う――。

だけど。
違うからこそ、恐かった。
今ならまだ普通にただの級友として話が出来る。
もし、こんな自分を悟られでもしたら……。

自分にはあまり禁忌という意識はない。
だが、相手はそうではないのだ。
こんな思いを抱いていると知れたら……。

三上に知られるのが恐い――。

(なにを考えている)

麻里という存在にすがりながら、否定したくて、男でも女でも求められるままに、刹那的に半ば自棄になって。
欲されることで自分を確かめた。
こんなことでしか自己確認が出来なかった過去。

(自分がしてきたことじゃないかっ)

すべてを曖昧に、明確にすることを避けてきた。
すべてをクリアにして、それに向き合えるだけの自信がなかった。

(逃げているだけ、なんだ)

過去に振り返っても戻ることは出来ない。

ここに麻里(保護者)はいない。
彼女は出て行ったのだ。

自分以外の人間を愛するよう言い置いて。





「今日、試験終了後、グラウンドにて球技大会の開会式があるからな。第一試合は昼食後一時。男子ハンドボールに出るやつは準備しておいてくれ」

三日間の期末試験最終日、朝のホームルームで球技大会実行委員はそう言った。
日程は先に連絡済だったから、確認みたいなものだ。

今日の体調は最低だった。
一番の要因は睡眠不足。加えて食欲もなかった。

さらに加えて、第一試合の男子ハンドボール。

空は青く立ち上る雲が、まるで雅人の思いとは正反対に、清々しかった。




 
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