フレンズ
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翌日の放課後。
夜半から降り出した雨はまだ降り続けていた。
まるで今までの埋め合わせでもしているようだ。
湿度は高いが、雨で冷えるせいか汗ばむことはなかった。
雅人はクラスキャンプの日程と候補地の確認で訪れた職員室から戻る途中、通りかかった典之につかまった。
「上手くいってるみたいじゃない」
「なにが」
短く返事をする。
これから図書室に向かうところだ。
典之をやり過ごしたかったのが本音だった。
「あのミカミと。同じ中学だってな。おまえのこと知ってるって?」
「同じ学校だったという話は、昨日川野さんから聞いたばかりだよ。それに……三上とそんな話をしていない」
歩きながら答えた。
実際、今日三上と話したことといえば、試験範囲のこととキャンプについてだ。
三上は昨日交わした条件を実行しようとしてくれた。
典之がついてくる。
何となく、このまま図書室までついてこられるのは嫌だと思った。
「ふーん、そうなんだ。俺はてっきり、中学時代の思い出話をしているのかと思った」
雅人は立ち止まり眉根を寄せ、発言者を見据えた。
「橋倉」
典之にその頃の話をしたことはない。
だが話の端々から勘のいい典之は感じ取っているだろうとは思っていた。
「そんな顔するなよ。おまえの過去なんざ興味ないさ。ただ……な」
「ただ?」
「おまえがあんな顔するなんて思っちゃいなかったからさ。――三上の前で」
「なに?」
「見てたから。ちょい悪趣味だとは思ったけどね、おまえが気になって」
昨日の図書室でのことを一部始終見ていたらしい。
本人が言うように悪趣味の一言だ。
「酷い趣味だ」
「そうは言うけどな。俺にしてみちゃ気が気じゃないさ。おまえ今まであんな態度なかっただろ? それがあいつが絡んでくると……」
「橋倉、なにが言いたい?」
「ライバル出現てとこ」
「ライバル出現? なんのだ?」
イミが分からずそのまま問い返す。
「おまえね……俺悲しくなってくる」
典之は大仰に溜息をついた。
「言っただろ? おまえのこと本気だって」
「本気…って」
そういえば……と雅人は思い出した。