フレンズ

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「ホームルームを始めたいと思います。今日の議題は二つ。夏休みのレクリエーション・キャンプに参加するかどうか。それから期末試験直後に毎年行われている球技大会の実行委員の選出――以上です」

雅人は教室で黒板の前に立ち、クラス委員として与えられた仕事をこなしていた。

なまじ頭が良かったため、一年のときクラス委員をそのときの担任から指名された。
以後、二年生になってもその役が回ってくる。
一年の半ばあたりから典之とつるむようになってからは、あろうことか生徒会関係からも声がかかるようになっていた。

本来なら面倒見の良さから言ってもクラス副委員の川野真琴(かわのまこと)のほうが適任だと思っているが、その彼女は書記よろしく、黒板に議題を書いていた。

「では夏休みのレクリエーション・キャンプ、通称クラスキャンプにこのクラスは参加しますか? 参加するという人、挙手をお願いします」

あえて雅人はこういう言い方をした。
一見積極的に物事を図っているようだが、自分の意見というものを言わない連中が多いのだ、まず挙手はない。

そのクラスキャンプだが、「クラス」とつくだけだけあって、各学年、クラス単位でそれぞれ参加・不参加を決める。これによって学校サイドとどうかなるということはない。
生徒の自主性に任せてあくまでもレクリエーションの一環だ。

しかし行くとなったら委員である自分の負担が増えるだけで、何の面白みもない。
せっかくの夏休みに、なんでクラスメートのために自分の時間を潰されなければならないのか。

「キャンプに参加したいと言う人はないですね。ではそれで……」

雅人の思ったとおり、挙手はなかった。
しかし意見を言うものがあった。

「何で? みんな参加しねえの?」

教室の一番後ろの席から三上崇史(みかみたかし)がそう言った。
大男と言われても不当でないほどに育った体躯。
クラスで一番背が高く、陸上よりバスケのほうが似合いそうだ。

「来年は三年だしキャンプ出来ないんだぜ? だったら今年しなくてどうするよ」

来年になれば受験生だ。
当然そういう行事参加は出来なくなる。

「だからオレ参加したい。で、いいよな? 室岡」

「いいよな」と真っ直ぐ見つめてくる三上に雅人は唐突に胸がざわめくような感覚を味わった。
 
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