人形は歌わない

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 捜査課の部屋ではアマンダがひとり俯き座っていた。
「アマンダ?」
「ああ、レイ――」
 レイを見とめ、あからさまにほっと顔を緩ませる。
「どうしたんだ。アレンに何があった? それにみんなは?」
 もう既に外に出て行ってしまったのだろうか。――に、しても変だ。
「レーイ。私、どうしたらいいか――」
「落ち着いて、アマンダ」
 アマンダの背を撫でる。
「ごめんなさい。ジェームス・コラントが殺されたの」
「な…なんだって!? いつ――?」
 あまりにも衝撃的だった。昨夜自分は彼に会ったばかりだ。
「今朝通報があったの。ホテルで…死んでいるのを従業員が見つけて……」
 コラントが死んでいたのは昨夜自分が彼と会っていたホテルの客室という話だった。
 所轄の違いから隣町の受け持ちになるが、手口にハロルドのときとの類似点が見られたため、こちらにも連絡が来た。
 そしてホテルの従業員の証言によりアレンが参考人と呼ばれたのだ。レストランの外からコラントの様子を窺っていた不審人物として。おそらく単独でコラントを調べていたことも影響しているかもしれない。
「アマンダ、アレンは?」
 アレンに容疑がかかるなど、まったく言いがかりもいいところだ。
「隣の会議室。あっちの署から人が来ているわ。警部も一緒にいる」
「分かった」
 レイは会議室のドアをノックすると返事も待たずに中に入った。
「レイ」
 バークレーが入ってきたレイに驚く。アレンも同様だった。
「バークレー警部、この人は?」
 アレンの前に座っていた見知らぬ男二人の、恰幅のいいほうが訊いた。彼らが隣の署の人間らしい。
「レイモンド・クーガーです。今コラント氏が殺害されたという話を聞きましたので」
「君がクーガーくんですか。昨夜、氏に呼び出されて話をされた」
「ええ」
 男は部長刑事でラルフ・ムーアといった。中肉中背のほうはデビット・ロイス。
「なぜアレンが参考人なんですか? 昨日会ったというなら俺のほうに話があると思うんですが」
「ええ、それは後ほど伺いたいと思います。ただホテルの従業員の証言もあって。何にしてもブルーナ捜査官が、昨夜のコラント氏が殺されたと思われる時間の何をしていたか話してくれないんです」
 ムーアは穏やかにそう言った。隣で聞いているロイスのほうは鹿爪らしい顔をしていた。

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