アニキの恋人
□アニキの恋人
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オレ、三上忠敬(みかみ ただひろ)には高二のアニキが一人いる。
そのアニキが最近おかしい。
もしかしてこういうのを今は夏だけど春が来たっていうのかな。
ずばり言うと、カノジョが出来た。
――だと思う。
アニキの様子が決定的に変わったのは、こないだクラスキャンプ行ってからだ。
見られていないと油断しているのか、ボーっとしたり、急に真面目な顔をしたり。
そうかと思えばやにさがった顔でニマニマしてたり、オレがこっそり見ているなんて気づきもしないで百面相をしている。
あの走るしか能がないデカイ図体のアニキにカノジョね。
いったいどんな人なんだろ。
男って背が高いっていうだけでカッコいいって思われるから、アニキってもてるんじゃないかと思う。
ホント、背だけは高いから。
190近いもんな。見栄張っても170のオレは見上げるしかないよ。
それにしてもどんな人なんだろう。アニキのカノジョって。
こないだ、アニキって部活のときの弁当、母さんに断ったんだよね。
そしたら母さんなんかピンと来たらしくって、誰かに作ってきてもらうのかって聞いちゃってさ。
アニキ、しどろもどろになっちゃって、返事に困ってたんだ。
だって、弁当要らないって言ってさ、昼代も欲しがらないなんて怪しいよね。
だから、料理は出来るらしい。
そっか、料理上手なカノジョ。
いいな、オレもそういうカノジョ欲しいな。
夜には自分の部屋にこもって、電話してるみたい。
ときどき笑い声が聞こえたりして、アニキがその相手の人と楽しく話しているんだと思うとちょっと羨ましいかも。