claps!
□梅雨葵
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梅雨の晴れ間。
雨粒の付いた、青々と茂った雑草の匂い。
もうすぐ、夏がやって来る。
夕日が沈むのも遅くなった。
だから、こうして俺はまだここにいる。
時折電車が通り抜けて行く。
電車が風を作って、雨上がり特有の生ぬるい空気がうねる。
その風に、髪が揺れる。
俺は、あいつから無理矢理渡された恋愛小説を読んでいた。
学校帰りの、高架橋の下。
自転車のカゴには、学生鞄が入ったまま。
何となく、何となくページをめくる。
続きが気になる。
また、ページをめくる。