短編
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《親友観察》番外
てるてる坊主
梅雨が近づき、肌にまとわりつくような湿気にイライラとさせられる。
教室の中が蒸し暑く、空気が重い。
こんな中で授業などやってられるかと数人が入れ替わりにサボっている状況が続く。
空気を入れ替えようとしても外は雨が降っていて窓は開けられない。
あー、頭が馬鹿になりそうだ…。
『ねぇ。』
午前中の授業は数分前に終わり、やっと来た昼休み。さあご飯を食べようと弁当を広げても食欲はあまりない。
それは咲も同じようで、弁当を前に肘をついて雨の降り続いている窓の外を見ていた。
「なんだぁ?」
いつもはキリッとしたオーラを身にまとい、優しい―俺にはそう見えないが―頬笑みを装備している彼女だが、ここ連日に続く雨や湿気などのせいでそのなりを潜めている。彼女が醸し出す空気自体が重く、動きが鈍くなっていた。
こいつでもこんな風になるのか、とどんよりとした頭の片隅で思った。
彼女の空気にあてられ、俺自身も動きが鈍くなる。全ての事が煩わしく思えてきた。
こんな姿を真田にでも見られたら、たるんどるッと怒鳴られるだろう。
自然とため息がこぼれた。
『雨、止めてくれる?』
…湿気のせいで、頭が沸いたか?
いつもより動きが鈍いと思っていたが、彼女ご自慢の頭も鈍くなっているようだ。
「無理に決まってるだろ。」
『あら、やりもしないで最初っから無理と決めつける根っからの現代っ子ね。あなたのような子供がいるから、日本という国が駄目になっていくのよ。恥を知りなさい。』
「それとこれは別だろ!?」
頭は鈍っているが、俺をいじるという機能はきちんと作動しているらしい。
そこも壊れていて欲しかった。
「だいたい、どうやって晴れにするんだよ」
『そんなの決まってるでしょう?貴方のその頭は、何のために禿げているというのよ。』
「俺はてるてる坊主じゃねぇ!!てか禿げてんじゃなくてこれはスキンヘッドだ!」
『そんなの、どっちも同じよ』
「違う!」
くそっ、こいつ本当に俺のこといじんの好きだな!
『ジャッカル坊主』
「言うな!!」
もう、梅雨なんて嫌いだ!
(ほら、きちんと仕事なさい)
(だから無理だって言ってんだろ!)
(逆さ吊りじゃなく、ちゃんと首を吊るのよ)
(おまっ、本当は俺を殺したいのか!?)
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