Short Story
□A BIRDCAGE
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“詩音お嬢様、お似合いですよ。さあ、行きましょう”
私が来ているのは黒地に桜の柄が散る着物。
あまり派手なものは好まない私と、豪華絢爛な物を着せたがる両親との間で出来た折衷案。
今日の式典とて、どうせ私にとってはどうでもいい、つまらないものなのだろう。
だけど、その考えも次の瞬間打ち消されることになる。
“詩音、今日はお前の見合いだ。くれぐれも粗相を起こさないように”
父の一言で私の目の前は真っ暗になった。
“はい・・・。分かりました”
そうとしか答えられない自分が悔しい。
だけど、この日私は両親の言うことを聞くなんて頭の片隅にもない。
会場につくと、そこは厳かな和風屋敷だった。
“お父様、お母様、先に行っていて下さい、お手洗いによってから行きます”
“分かった”
そう言って、両親が先に行くのを見届けると、屋敷の庭園に向かって歩きだす。
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