白鳥短編

□血色頭巾×眠り毒姫
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コンコン、
扉をノックする音が聞こえた。
久し振りの客の様だ。


前兆×血色頭巾
深イ森ノ猟奇者達

白鳥サクラ


「まぁ、こんなに綺麗な人が居るとは思わなかったわ。」
入って来たのは赤黒い頭巾を被った女の子だった。
長い黒髪と左目の眼帯が印象的な、幼かったが美人な子だった。
其の美しさが、微妙な気味の悪さを生んだ。

一緒に居たのは男だったが、牙が有り、獣の耳が有る。
狼男?
俺は悟った。

「動かないの?眠って居るの?」
頭巾を被った子は聞いた。
其の声は細く、何処か嬉しそうだった。
「死んでるんだろ。」
少年は楽しそうだった。
「何しに来た?こんな森に。」
そう、此の森は城が没落してから、呪われた森と称されるようになっていた。
唯でさえ人が来無かったのだから、もう腹をすかせた獣しか居無い筈。
「食べるものを、捜してかしら?」
少女は真顔で、且疑問系で呟いた。
「そんなもの無い。」
「いいえ、有ったわ。食べるもの。」
少女と獣耳を持つ少年は彼女をじっと見て言った。
其の眼は腹をすかせた獣の様。
「此れは違うだろ。人間だ。」
「俺達は人肉しか食べられない。」
少年が茶色の眼を見開いて言った。
「其れでも駄目だ。彼女の体液は、人と少し違う。御前等も死ぬぞ。」
「人と・・違うの?」
頭巾の少女は彼女に近寄った。
少年も少女と彼女を見る。
「綺麗で若いのに。可哀想に・・」
其の言い方は先っき迄食材として見て居た言い方とは違う。
だから俺は驚いた。
「此の人、あのお城のお姫様?」
「見たのか?」
「少しだけ。酷かったわ。笑ってしまったもの。臭いが凄くてとても居られなかった。」
頭巾を此方に向けた儘、少女は答えた。
やはり身体は腐るのか。
城の事を考えて居たら、少女が口を挟んだ。
「人と違うから、此んな森の奥に?」
「あぁ。」
少女は人と違う事を気に掛ける。
其の理由は何となく解った。
「なら、私達と一緒だわ。私達も隠れて生きなくちゃならないの。ずっと森に居るのよ。」
其の声は相変わらず細かったが、悲しくは無さそうだった。

「私達、一緒ね。」

少女は初めて此方を向いた。
眼帯が痛々しかったが、表情の無い顔は笑って居る様に見えた。
少年も少し笑う。

「此処に来て、何だか良かったわ。食べるもの探しだと思ってたけど、違ったのかも。」

「懐かしかったの。」

其の深いで在ろう言葉の意味を、俺は理解出来無かった。
しかし、少年は理解して居る様だった。

「じゃあね、魔法使いさん。」
少女は立ち上がって扉に向かった。
赤黒い頭巾が揺れて黒髪が靡いた。

「御前達は何だ?」
俺の前を通り過ぎた時、俺は思わず聞いた。
特に躊躇いもせず、少女はゆっくり立ち止まり、静かに言った。
「此の人は半狼人。」
黙った儘の少年を手で示して言う。

「そして私は、アカ頭巾。」

「赤い頭巾だからか。」
「そう、血に染まった赤い頭巾だから、血色頭巾ーアカズキンー。」
くすっと彼女は笑って言った。

狼男が扉を開ける。
少女は又俺に背中を向け、軽快な足取りで扉に向かって行った。
御機嫌な様だ。
「どうか悲しまないで、魔法使いさん。きっと私達の様な者が未だ居るわ。」
少し此方を向き、眼帯を押さえながら少女は歩いた。
「見えなくなった此の眼で見えるものが沢山有るの。」
一定のリズムの靴音が嫌に不気味に聞こえる。
「蛙に成った残虐王子に片脚片腕を無くした少女、お菓子の家に棲む暴食兄妹、弟を捜す喪服の王子・・。」
そう、彼女は小さいながらに異常な狂気を秘めて居る。
「きっと未だ未だ居るわ。」
楽しそうに話す少女に続いて半狼人が出て行く。

「深イ森ノ猟奇者達が。」

其の言葉を残して、扉はぱたんと閉まった。

110515

後書き
今晩は白鳥です、
新作の前兆、全ての予告です、血色頭巾大好きだ、本当は新作の後に公開予定だったんですが、前兆も悪く無いかなと思い新しい事に挑戦してみました、喪服の王子は最近思い付いて、実は早く書きたい、新作より早く出来たらどうしよう困っちゃうな←
其れではきっと自作になる新作が無事完成しますように、
読んで下さった貴方様に愛を込めて、

白鳥サクラ

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