白鳥短編

□鏡ノ魔
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昔々或る所にとても醜い王女様が居ました。

 鏡ノ魔
   白鳥サクラ

或る所にとても豊かな国が有りました。
近くに森や川が有り、自然に恵まれたとても美しい国でした。

美しかったのは国だけでは有りませんでした。
王様と御妃様も美しかったのです。
やがて御妃様は1人の女の子を産みました。
皆が皆思いました。

「此の子も絶対美しい。」

月日は経ち、王女様はすくすくと育ちます。
顔の形やパーツの大きさもはっきりして来ました。
そして、皆少しずつ気付き始めたのです。

「此の子は醜い。」

小さな眼、張りの無い肌、大きな口。
誰もが認める不細工でした。

優しい王様は国の者に命令しました。

「国中の鏡、硝子、噴水、自分の姿の見える物を処分せよ。」

王様の言う通り全ての鏡や硝子や噴水が処分され、国には美しさが欠けました。

更に月日は経ち、王女様は又年を取ります。
読書の好きな、とても賢い子に成りました。
顔は相変わらずですが・・・

今日も本で学んだ事を王様に聞きます。
何故此の国には鏡が無いの?硝子が無いの?噴水が無いの?

私はどんな顔をして居るの?

王様は困りました。
そして言いました。
「姫、見て御覧?パパもママも美しい顔をして居るだろう?」
えぇ、そうね。
「姫はパパ達の子供なんだから美しいに決まってるじゃないか。」
王女様は考えました。
其れもそうね。
パパ、私早く自分の顔が見たいわ。

勿論自分の顔を見る筈も無く、王女様は御年頃に成りました。
とても賢く、御洒落な子に成りました。
今日も可愛い御洋服や靴、髪飾りを身に付け、大好きな御本を読みます。
顔の事は知りませんが、

そしてもう1つ。
知りたがりに成りました。
やがて其の知りたがりが悲劇を招きます。

パパ、私はどんな顔をして居るの?
パパ、私は誰に似て居るの?
パパ、私は自分の顔を知ら無いのに、どうしてパパは自分の顔を知ってるの?
パパ・・・

パン!

「五月蠅い、其の事はもう口にするな!」

王様は怒りました。
娘の純粋に知りたがる不細工な顔を見て居ると哀れに思ったからです。

其れ以来、王女様は顔の話をし無く成りました。
そして、心の中で強く願いました。

自分の顔が見たい。

其の願いは強く大きく成り、やがて魔女を呼びました。

「今晩は王女様。私は魔女の蓮。貴方の願いを叶えに来たの。」
蓮はにっこりと笑いました。
何時もの様に・・・

王女は迷わず願いを言いました。
蓮は黒い鏡を王女様に上げました。

きゃあああああああああぁああああああああああああ

絶叫が響きました。
「王女様の声だ!」
家来は一斉に王女様の元へ集まります。
王女様は直ぐに見付かりましたが、彼女は其れ所では有りません。

どうして?どうして私は美しく無いの?

王女様は泣きながら顔を引っ掻きます。

パパもママも町も、皆美しいのに、

顔を引っ掻いた痕が赤く成ります。

「どうして?どうして私だけが醜いの?」

血が流れても必死に彼女は顔を引っ掻き回しました。
家来に止められても必死に掻こうとしました。
泣きながら、叫びながら、王女様は絶望しました。

王女様は嘘を吐いた王様を責めませんでした。
鏡を隠したのも、自分の姿の見える物を隠したのも、全て自分の為。
醜い自分の所為。

王女様は前と同じ様に願いました。

綺麗に成りたい。
美しく成りたい。

やがて魔女がやって来ました。
そして言いました。

「貴方は真実を知る恐ろしさを知らなくてはいけない。」

利口な王女様は其の言葉の意味を知りました。
同時に絶望しました。

そして自殺を図ったのです。
王女様にとって自分だけが醜いと云う事は其れ程辛かったのです。

自殺は未遂に終わりました。
王女様が首を吊る所を家来の1人が見付けてしまったのです。

美しい王様と御妃様は悩みました。
何とか彼女を救う方法が無いか。
彼女が何とか美しく成れ無いか。
その想いは願いと成り、魔女に届きました。

魔女は黒い姿で2人の前に現れました。

「今晩は王家御夫婦。私は魔女の蓮。貴方方の願いを叶えに来たの。」
前や何時もと同じ様に笑います。
美しい顔で。

王様と御妃様は願いました。
蓮は2人の願いを叶えました。

廊下を走る音が聞こえます。
それは王様と御妃様の音。
王女様の部屋に向かって居るのです。

扉を開けて泣き崩れました。
そこに居たのは全く別人、
白い肌、大きな瞳、赤い唇。
美しい顔の王女様でした。

パパ?ママ?どうしたの?
王様と御妃様は泣きながら鏡を王女様に手渡しました。

王女様は自分の顔を見て眼を見開き、驚きます。
そして言いました。

此れは誰?

私じゃ無いわ。
私はもっともっともっと醜いもの。
此んなの気持ち悪いわ。

王女様は持って居た鏡を床に投げて叩き割りました。
そして、その破片を拾い、

自らの顔を傷付け始めました。

1つ、又1つ、と王女様の顔には静かに傷が入って行きます。
そして其処から血が流れるのです。
王様と御妃様は唖然として動きません。
魔女は其れを後ろから眺めます。

顔が傷で埋まり、血で覆われても、王女様は手を止めませんでした。
今では、ぐちゅっぐちゅっ、と音も立ちます。
切る度増える痕が王女様の美しい顔を跡形も無く壊します。

やがて王様が口を開きました。
「何故、何故姫は・・・」

「貴方達は真実を変える事の恐ろしさを知らなくてはならない。」

魔女は静かな声で言いました。

王女は不意に手を止めました。
そして俯きます。
血が涙の様に床に滴りました。

王女様は本物の涙を流し始めました。
そして言いました。
ねぇ、蓮さん。

私、顔は醜いけれど、血は、皆と同じで美しいよ。

そして、ふ、と笑い、倒れました。
顔から床に血が零れ、血の水溜りを作ります。
王女様は動かなく成りました。

「真実は、自分で見付けなくてはならなかったのよ。」

魔女が真顔で言いました。


◆後書キ
今日は今晩は御機嫌様皆様白鳥です、
行き成りですが、白鳥は何時も最後の一文を大切にして居ます、某神的作家様々と同じ様に、最後の文で伝えたい事を伝えたり、全貌を暴いたり、兎に角読者に衝撃を受けさせようと頑張って居ます、しかし、今回は其れが出来無かった気がする。少しショック、今回は伝えたい事が渋滞した感じです、しかもそれもちゃんと伝わら無かった様な、自分の中で解釈して居る、と云う方は結構ですが、意味不明な方は出来れば解説を読んで下さい、申し訳無いのです、
斯う云う事を言って良いのか解りませんが、顔って大切だと思います、私いけめそ大好きですし、個人としても顔の醜さに大変悩み、他の理由も有りますが、自傷行為をして居た懐かしい時期も有ります、其の時憶えて居るのが親しい知人の考えで、其れが今回の考え方に反映したりして居ます有難う知人←此れは本当に知人と私の考えですが、整形したら負けです、化婆い化粧迄は良いのです、他人の顔に成った王女を見て、自分が死ぬと云う事の悲しさをどうか解って下さい、
此んな所迄読んで下さり有難う御座居ました、感想等有りましたら是非どうぞ、→
読んで下さった貴方様に感謝を込めて、

◆解説
今回、真実と云うのは醜い顔。最初王女は隠されて居た醜い真実を軽い気持ちで知ってしまう。次に王家夫婦は王女を思いやりつつも顔を美しくしてしまう。王女の一部を殺してしまう。言い換えれば真実を変えてしまう。殺してしまう。其れはとても恐ろしい事で、王女は自分の顔切り刻みます。そして最後に、自分の血を見た王女は、喜びながら死にます。美しい血も又真実なのですよ。真実は人に教わるので無く、自分で見付けなくてはならないのですよ。
そんな御話でした、少しすっきり


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