06/27の日記

14:51
夕暮
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青蓮院宮さまに極秘の文を届けに行くよう大久保さぁより言いつかる。
もしも、内容が外に漏れるような事態になれば大久保さぁは切腹は免れぬ程の内容だ、と小松様が念を押すように仰る。暗に、万一奪われたり、襲われるような事になったら死を賭して護れという事じゃ。
深く頷いて、懐に文を仕舞うて立ち上がると、大久保さぁは此方は見ずに、ただ一言気をつけろと申された。

おいは、この仕事はおいにしかできんと見込んで下さった事が、ただ嬉しいと思う。

しかしおいの留守中、大久保さぁがおひとりになる事だけが心配じゃ。最近は浪士どもが訳も分からず天誅と称して暗殺を繰り返している。くれぐれもおひとりでは出掛けぬよう念を押すと、片頬だけでお笑いになった。どこかはにかむような、綺麗な笑顔であいもした。


夕方、無事に藩邸に戻る。薄暮のなか、門の前に人影を見つけ目を凝らすと、大久保さぁが懐手をして佇んでおられた。おいが近づくと何も言わず、ふんと鼻を鳴らしてさっさと中に入ってしまわれた。


少しばかり、嬉しく思いもした。








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