幕恋hours short
□夢見
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「寂しかろうな・・・しかし、ワシはもうおまんを放すことは、できんがじゃ」
「うん・・・」
「すまん。好きじゃ、深雪」
「うん」
龍馬さんの胸はあたたかくて、背中に回された腕は逞しくわたしを包んでくれて、心地のいい脱力感に心から安心する。
「わたしも、龍馬さんが大好き・・・龍馬さんのいない世界なんてもうわたしにはありえないの・・・」
龍馬さんの背中にわたしも腕を回す。ほどよく筋肉を纏った厚い背中。何度も何度もわたしを抱いてくれた大きな躯。
触れ合って、ぬくもりを分け合うだけでどうしてこんなに落ち着くんだろう。
「深雪・・・・」
首筋に熱い吐息がかかり、あぁ、と溜め息のような声が洩れてしまう。
いとしくてたまらない気持ちがお互い溢れてくるのがなんとなくわかって、わたしたちはそっと唇を合わせる。
「・・・好いた女子の幸せを守るんは、男の役目じゃ。しかしワシはいつも深雪のことで迷っちょる」
龍馬さんは目を伏せて呟く。わたしを帰さなかったことに関しては、いつまでたってもこうして気遣ってくれる。
「・・・家も家族も、わたしの持っていた繋がりは全て絶たれてしまったけど、それでも」
この先どんなことが待っているのかわからないけれど、わたしは。
「龍馬さんの傍がいいの」
まっすぐ、龍馬さんをみつめて告げた。時々はこんなふうに過去を思い出して辛くなってしまうときもあるだろうけれど、でもわたしは自分でこの道を選んだから。
この選択を決して後悔しない。
もう一度、今度は心からの愛情を籠めて、わたしは龍馬さんに口付けを贈った。