幕恋hours short
□おまえがすき
2ページ/11ページ
「うおっ!?どうしたんだ深雪
!?」
晋作さんはいきなり涙を落したわたしにびっくりして、がばっと顔を手で挟んで覗きこんだ。
「な・・・なんでも・・・な・・っ」
しゃくりあげてしまって上手く言葉にできない。
こんなに一生懸命な晋作さんに比べて、なんにもできない自分が不甲斐なくて泣いてるなんて、とてもじゃないけど説明できない。
「泣きたいのなら、オレの胸で泣け!!」
そんなベタなこと堂々と言えるの、晋作さんくらいだよ・・・。
でも、ぐっと頭を引き寄せられ、彼の胸にぴったりくっついていると、どうしようもなく甘く痺れるような感覚が押し寄せてくる。
「・・・・お前は、頑張りすぎなんだよ」
押し付けられた頭や耳に、晋作さんの声が優しい振動とともに流れ込んできた。
「知らない世界、知らない人間、慣れない習慣や生活、食い物だって全然違うんだろう。それなのにいっつも笑ってるなんて、おかしいんだよ」
「・・・だってっ・・・」
「まあ、そんな深雪だから惚れたっていうのも確かだけどな!」
そんな。
そんな風に、優しくしないで・・・。
涙が止まらない。でも、泣く事がこんなに気持ちいいなんて、
今まで知らなかった。
熱い涙があとからあとからぽろぽろ零れ落ちる。
晋作さんはわたしの顔をそっと上げると、温かい唇で涙の痕を辿り、溢れた新しい涙をちゅっと嘗め取った。
無意識に、びくんと身体が跳ね上がる。
晋作さんは、大きく反応した私に一瞬動きを止めたけれど、意を決したように囁いた。
「深雪・・・・」
熱い吐息とともに入ってきた晋作さんの声。
その直後、滑り落ちた晋作さんの唇は、わたしのものと優しく重なった。