幕恋hours short
□ほろ酔い悪酔い
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「降ろして!龍馬さんなんかきらい!」
部屋を出た後も尚、深雪はばたばたと暴れて龍馬の胸を叩いた。
龍馬はそんな彼女を困ったように見つめる。
「私も、みんなと一緒にいたいのに・・・どうして・・どうして帰れなんて言うんですか」
「深雪が大事だからじゃ」
龍馬は短くそう言うと、後は無言で廊下を歩きだした。
深雪が黙り込んだのでそっと見下ろすと赤い顔でじっと自分を見ている目に出くわして龍馬は少々狼狽した。
部屋に着いてそっと深雪を降ろすと、龍馬は彼女の前に座った。
「気分はどうかの?気持ち悪くはないがか?」
ふるふるとかぶりを振る姿を見て、にっこりと笑う龍馬。
「水を持ってくるきに、少し待っておってくれんか」
「行かないで」
深雪は立ち上がりかけた龍馬の袴の裾を掴んだ。
さっきの勢いはどこへやら。すっかり意気消沈した様子に、やはり具合が悪いのかと龍馬は気遣った。
「どうしたんじゃ?すぐ戻るから心配せんでもええ」
「・・・さっきは、きらいなんて言ってごめんなさい」
消え入りそうな小さな声。
震える華奢な肩。
思わず龍馬は深雪を引き寄せた。
胡坐をかいた膝にちいさな身体をすっぽりと収めると、耳元にそっと囁いた。
「ごめんなさいと言うことは、嫌いじゃないと言うことかのう」
まだ酔いの醒めやらぬ深雪は、くすぐったそうに首をすくめると恥ずかしそうに頷いた。
「だから・・・飲んだんです」
「ん?どう言うことじゃ」
突然の言葉に龍馬は不思議そうに首を傾げた。
「龍馬さんと、もっと一緒にいたいから。みんなお酒をずっと飲んでいたけど、私は飲めないから皆さんにもう寝ろとかお部屋に戻っていてもいいって言われて・・・だったら私もお酒を飲んだらここにいてもいいのかと思って」
後ろから深雪を包み込むように抱いていた龍馬は、それを聞くと彼女の肩に顎を乗せて呟いた。
「・・・ほうか。それで酒を飲んでおったんか」
「でも、だんだんぼーっとしてきて、よくわからなくなっちゃって・・・」
(で、さっきの帯騒ぎっちゅう訳か)
やっと龍馬は納得がいったとひとり頷いた。