幕恋hours short
□my sweet
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寺田屋に着くと、帰ることを知らせていなかったので当然の如く表戸は閉め切られていた。
裏口のかんぬきもしっかりかかっているようで、扉はびくともしない。
(みんな、もう寝ちょるか・・・)
刀を抱いて、裏口の前に座りこんだ時、聞きなれた声がした。
「龍馬か・・・・?」
「以蔵!?」
どうやら自主的に夜回り中だったらしい。いつもは武市様さまじゃのう、とからかっている以蔵に今日は心から感謝した。
「今日帰るとは聞いていなかったが」
門を開けながら以蔵は不審そうに尋ねた。
「いや、明日ちっくと身体が空いたんでな、深雪の顔が見とうてたまらんようになって、急いで帰ってきた訳じゃ」
「あいつはもう寝てるぞ」
呆れたように以蔵が言う。
「かまわんき。朝一番で顔が見れるじゃろう」
「・・・・勝手にしろ」
以蔵が去った後、龍馬はしばらく思案していた。
ああ言ったものの、やはり少しだけでも顔が見たい。
(ほんの、ちょっとじゃ)
足音を忍ばせて、深雪の部屋へ向かう。寝顔でもいい、少しだけでも顔が見れれば今夜はなんとか眠れそうだった。
すうっと障子を開ける。
大きな身体を滑り込ませるように部屋に入ると、穏やかな寝息が聞こえた。