novel
□Resistance!
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ある日、深雪があんまり可愛いんでいつものようにぎゅうと抱き締めて、口付けしようとしたら、抵抗された。
「もーっ!いっつもいきなり…そういう事しないでって言ってるじゃないですかぁっ!」
腕の中で、大きな声を上げる。
「…深雪が可愛からいかんのじゃ…」
だいたいいつも深雪は、これで照れて観念するのだが、今日は違った。
「ダメなものはダメです!」
深雪はそう言うと、わしの胸をぐいーっと押して、腕からすり抜け、真っ赤な顔できっと睨んだ。
わしは空になった胸の前で腕を組み、訊ねた。
「なんで、いかんのじゃ?」
「だって………っ!」
深雪はそう言って口籠もり、唇を結んで下を向いた。
言葉を探す様に、目を泳がせ、眉を下げる。
「だって……なんでいつも、いきなり何ですか…!?」
「……ほりゃぁ、急に抱き締めとうなるき!それに、おんしの…たまげて照れた顔が、こじゃんと可愛うてな…」
「……っ!もう!りょーまさんの、ばかぁっ!」
「おっ…ちょ、深雪!?」
深雪は、怒鳴ったかと思うと、顔を真っ赤にして、ぷいっと背を向けて駆け足で立ち去ってしまった。
わしは呆気にとられ、徐々に離れていく深雪の背中を見つめながら、首を傾げる。
「…虫の居所が、悪かったんかの?」
腕組みをしたまま、歩き出す。
別に、嫌なわけじゃない
不意打ちも、嫌いじゃないし
抱き締められるのも、キスをされるのも、はっきり言って嬉しい
でも、でも!
恥ずかしいんだよ!
すごく、恥ずかしいんだからね!
毎回それにドキドキしてる、自分自身も恥ずかしいんだよ…
何度されても慣れない。
全身が熱くなって、何も言えなくなって…。
両手を頬に当てる。
それなのに、反芻してしまう。
その度にドキドキして、胸がきゅうって苦しくなって…。
もう、ちょっと、耐えらなくなってしまったので、少し抵抗を試みたのだ。
でも、さっきのは…酷かった……よね
ちらりと、もう見えなくなった龍馬さんを振り返る。
「ばか…とか言っちゃったし…」
恥ずかしくて、何にも言えないからって、言うに事欠いて…ばか!とか…
ばかは、私だよね!
「あーーーーっ…もう…」
その場でうずくまって、頭を抱える。
「……後で謝りに行こ…」
あんな事、しなきゃよかった。
ため息を吐いて立ち上がり、背筋を伸ばしてから、歩き出す。