幕恋男子部
□As always
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熱くて、たまらない。
それなのに。
灼熱に貫かれている間だけは、自分の感情も理性もなにもかも消え失せて、一個の命として存在する。そんな思いだけが体を支配している。
「・・・・うっ」
「声出しや、大久保さん」
目を開けると、坂本が逞しい半身を汗ばませて見下ろしている。私の脚を脇に抱え込み、より深く繋がるようにな体勢で、余裕じみた笑みを浮かべている。
手首は、行為の始めに腰紐で結わえられて自由を失い、私は抵抗できないまま坂本が好きに振舞うのを許していた。
「い・・・やだ」
弄るように言うのが悔しく、顔を背けて言い捨てる。
「・・・これでもかのう」
「あ・・・!や、め・・!!」
揺すりあげられて、思わず上げた声に狼狽した顔を坂本は満足そうに見る。
坂本が、誘いをかけるようになったのはここひと月ほどのことだ。
何故それにやすやすと乗ったのかは自分でもわからない。ただ、はじめて躰を重ねた後、憑き物が落ちたような不思議な感覚が残ったことだけは鮮明に覚えている。
こちらの事などお構いなしに行為を始め、ただただ激しい情交だったが、欲望を満たす事だけを目的としたあの時だけは、薩摩藩で負う重責も大久保利通という名もかなぐり捨ててそれだけに没頭した。
同性との情事は薩摩では珍しくないことだ。理由は様々だが、私とて例外ではない。しかし、この坂本と言う男が特にそれを好むと聞いた事はなかった。
「・・・・う・・・あ・・・っ」
「ちゃんとこっちに集中しとらんと駄目じゃろう」
くくっと笑って、中に入ったまま坂本は楽しそうに前を弄りはじめた。すでに散々坂本の手によって育てられたそれは、解放を求めて蜜を零している。ぬめった先端をくりくりと指先で苛まれて、咄嗟に息をのんだ。
「イキたいか?・・・大久保さん」
中の圧迫感とともに高ぶりが一気に駆け上がってくる。そこに坂本はぐっと顔を近づけてからかうように覗き込んできた。
「ちが・・・う・・・」
「ほうかのう。しかし大久保さん、そがぁに顔を真っ赤にしちょると可愛いらしゅうて・・・」
そう言いながら、坂本は鈴口をこじ開けるように爪を立てた。
「あ・・あ・・っ!!」
「・・・・ますます、虐めたくなるがじゃ」
坂本は髪を括っていた紐をするりと抜き取ると、素早く私の雄の根元を戒めた。
「なっ・・・!」
「素直にならん大久保さんに、仕置きというとこかのう」
「ふざけるな、・・・解け!」
血流が紐に遮られて、拍動が頭に響くような錯覚を覚える。
「ほうじゃ、ひとりじゃあつまらんきに、客を呼んでおるんじゃが、そろそろ来たようじゃな」
相変わらず上機嫌の坂本を見上げた瞬間、部屋の外から聞き覚えのある声が聞こえた。