*gift*
□恋より甘く
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ぎしり、と板の軋む音にふと目を開ける。
障子を隔てた廊下はほのかな月明かり、ぼんやり映る影法師。
夢なのか現実なのかよくわからなくて、ぼうっとその影を眺める。すると見覚えのあるくせ毛の影は、障子の向こうにそっと座った。
「・・・・どうしておんしは、いつもそんなに悲しい顔で見送るんかのう」
ひとりごと?
誰にともなく呟く声に、鼓動が高くなって、思わずわたしは布団の端をぎゅっと握りしめた。
「・・・おんしを離したくない、傍にずっと置いておきたいと思うんは、罪なことなんじゃろうか」
どうして?
「悲しい顔を見るたびに、ワシはそれを聞きたくなってしまうがじゃ」
ふうと吐息を洩らす影に、わたしはそっと近づいた。
「・・・・お返事しても、いいですか?」
小声で声をかけると、白い障子の向こうの影が息をのむのがわかった。
「傍に、いたいです。龍馬さんとずっと一緒にいたいの・・・・」
少しの沈黙の後、静かに障子が開いた。
「おんし・・・」
「龍馬さんのこと、愛してもいいですか」
涙でぼやけた目の前で、龍馬さんの笑顔が見えた。苦しいくらい大好きでたまらなかった、太陽みたいな笑顔。
抱きしめられた腕の中で、わたしは今やっと気づいた。
もう
ずっと前から。
この心ぜんぶ あなたのもの
あなただけのもの。