幕恋hours short
□行水始末記
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「いやー!!暑い!!まっこと暑いのう!」
井戸端でお米を研いでいたら、裏木戸から龍馬さんが盛大に騒ぎながら帰って来た。
「お帰りなさい!」
振り返って声をかけると、龍馬さんは嬉しそうににかっと笑う。
その顔に浮かぶ汗を見て、袂から手拭いを取り出し差し出すと龍馬さんはちょっと不服そうな顔で小腰をかがめた。
「え?」
「どうせなら、拭いてくれんか」
額の汗を光らせてニコニコ笑う龍馬さん。うーん、この笑顔にはとても敵う気がしない。
「もう、仕方ないですね」
袂を押さえてそっと拭いて上げる。なんだか恥ずかしいような照れ臭いような不思議な気分。
「夕餉までまだ間があるな。それまで行水してもええじゃろうか」
言いながら龍馬さんはすでに着物の上を脱いで、もろ肌脱ぎだ。そのまま裏庭の隅にあった盥を取って来ると、豪快に井戸水を汲み上げて水を満たし始めた。
「あ、あのっ、龍馬さん、今?ここで?」
狼狽えるわたしをちらりと悪戯っぽい目で見遣った龍馬さんは、何も言わずに袴の帯も解いてしまった。
「きゃっ!!」
見たことがないわけじゃ無い……けど、明るいうちからじゃ刺激が強すぎる、龍馬さんの褌姿。
発達した胸筋や胸板の厚さを誇張するように浅黒い肌が引き立てるさまに一瞬目を奪われる。
「ほれ、汗びっしょりなんじゃ」
確かにそうだけど。