幕恋hours short
□息継ぎの間
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「ちょっ・・・、どうしたんですか?」
今日は大事なお客様があると言うから、お茶を出してすぐに奥に引っ込んでおとなしくしていたというのに。
今度はお酒の用意だと呼び出されて、女中さんとお燗をつけたり酒肴の用意をしたりして、やっと一通り済んだと思って遅い夕飯をお勝手で摂っていたらまた呼び出された。大久保様、深雪さんばかりお呼びになりますね、と女中さんに笑われて、ちょっぴり恥ずかしい。
「きっと、お綺麗な想い人を見せびらかしたいのでしょう」
「や・・・やだもう、からかわないでくださいよ」
言いつけ通りお酒のお代りを持って行って、酔ったお客にちょっと下卑た冗談を言われて、ほうほうの体で下がったわたしは薄暗い廊下の途中で不意に呼びとめられた。
振り返ると、さっきまでお座敷にいた大久保さんがいて、お客様は?と問いかけたわたしを無言で近くの納戸のような狭い部屋に引きこんだ。
「ん・・・っ」
いきなり唇を塞がれ、驚いて目を見開いたわたしを大久保さんはじっと見つめる。少し酔っているのかいつもより血色のいい顔が新鮮に見えた。
そのまま、ぐっと後ろの羽目板に押しつけられる。逃げ場がなくなったわたしの頭に大久保さんの大きな手が添えられ、角度を変えた唇から舌が差し込まれた。
「ん・・・ふ・・・」
どん、と胸を叩いて拒絶しても、やめるどころかますます口づけは激しくなる。
「・・・・!」
はっと気づくと、着物の裾が端折られ、慣れた仕草で太腿がまさぐられる。
「や・・・!大久保さん!?」
「喋るな」
短く言うと、すうっと脚を撫で上げた手が、足の付け根の秘裂をなぞった。
「あ・・・っ」
悔しいけど、さっきの口づけでわたしのそこは熱く潤んでしまっていた。いつも愛してくれる時と同じに、大久保さんの手は、言葉と裏腹にとても優しいから。
強弱をつけて入口を指が行き来し、そのすぐ上の敏感な芽を擦られると膝ががくがくとわらって、崩れ落ちそうになる。
「・・・だ・・めっ、誰か来ちゃう」
「だめ、か・・・・?」
「えっ?」
いつも行為の時は強引なくせに、そんな風に尋ねられてちょっと戸惑う。見上げると、うっすら赤い顔の大久保さんの横顔が目に入る。
「いま、抱きたい」
耳元に囁かれる熱い吐息と言葉に、くらりとなる。ずるい、そんな顔で言われたらなんて返事したらいいのかわからなくなっちゃう。
「・・・抱くぞ」
「え、まっ・・・」
かちり、と金属音が聞こえ、大久保さんがベルトのバックルを外したのがわかった。